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法律

相談 39 : 3年前からK市の男女共同参画推進センターで働いています

2016.05.17 Tue

3年前から、K市の男女共同参画推進センターで働いています。
センターの運営は、指定管理者制度ということで、NPO法人が引き受けていて、わたしはNPO法人に雇われています。

NPO法人からは、「女性が働きやすい職場を目指しています」と説明を受け、育児休業制度など充実しています。
ところが、正社員は一人もいなくて、全員が、3年間の有期雇用です。
所長は、「3年後も、更新するので安心してほしい」と言っています。

わたしは、この職場で、育児休業もとって、ずっと働き続けたいと思っています。
他の会社で働いている友人から、「最近、法律が変わって、どうも、5年間が限度らしい」とも聞き、今後のことが不安になってきました。

どのようになるのでしょうか。

回答

回答 39 : 打越さく良さん(弁護士)

2013年に改正労働契約法が施行された際、契約社員が5年経過前に契約を打ち切られるのではないかとの懸念が広がりました。厚生労働省の説明 によれば、むしろ、「有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにするため」、「有期労働契約の適正な利用のためのルール」を整備する改正というのに、逆に不安が募らせているようです。有期労働契約とは、1年契約、6か月契約など契約期間の定めのある労働契約のことをいいます。パート、アルバイト、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、有期労働契約といえます。
 具体的に法の内容を確認しましょう。上記の改正でのポイントは、3点ありますが、ご質問と関係する2点を挙げます。
1 無期労働契約への転換(第18条)
有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できます。
2 「雇止め法理」の法定化(第19条)
最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定され、一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになりました。一定の場合とは、①有期労働契約を反復更新していて、無期労働契約と実質的に同じ状態となっている場合や、②有期労働契約の期間が満了したときに、契約が更新されると期待することについて、合理的な理由がある場合です。会社側へのアドバイスを本で読むと、①については、更新のたびに契約書をきちんととる、②契約の更新があるようなことを期待させるような言葉をかけてはダメ、といったことが書いてあるものです。
あなたの場合は、契約の更新があるようなことを期待してもしかたないようなことを上司から言われています。ですから、契約期間の満了前に、契約の更新の申し込みをすれば、労働契約法19条により、勤務先は今までの条件と同一の条件で承諾したものとみなされることでしょう。
そして、更新され、5年を経過した時点で、同法18条により、あなたが申し込みをすれば、期間の定めのない労働契約に転換できることになります。
 勤務先があなたとの契約期間を5年までとしたいのであれば、更新を期待させるような言動をしないはずです。みだりに不安にならなくて大丈夫です。ただ、そのような言動をしていない、と後にいわれないように、日記等記録を取っておくことが大切でしょうね。

厚生労働省「労働契約法の改正について~有期労働契約の新しいルールができました~」http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/

回答者プロフィール

打越さく良

事務所は女性弁護士が5人。事務員さんも全員女性で、あたたかく笑いのたえないところに身をおいているので、過酷な事件にもめげずに立ち向かっている。離婚、DV事件、子どもの面会交流などを多数担当。また日弁連家事法制委員会,両性の平等委員会委員でもあり,家族法改正ロビイングにいそしむ。 著書に『改訂版Q&ADV事件の実務 法律相談から保護命令・離婚事件まで』(日本加除出版)