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法律

相談 40:わたしは新入社員1年目で総合職の女性です。

2016.06.23 Thu

配属された支店では、毎朝清掃会社に掃除を依頼していますが、
そのために社員が交代で1時間早く出てきて会社の鍵を開けるように言われました。
でも残業手当をつけないようなのです。
母に相談すると「お母さんのころは、女性だけがお茶くみ当番で朝早く来させられていたから、
男性社員も交代ならいいんじゃない」と言いますが、なんか違う気がします。

わたしは残業手当は労働者の権利として支払われるべきだと思うのですが、
せっかく入社した会社なので、言い出せません。
わたしはどうしたらいいのでしょうか。

回答

回答 40:小島妙子さん(弁護士)

使用者は,手待ち時間や就労の前後などの準備中など,労働者が実作業に従事していない時間について,賃金を支払わない取扱いをすることがあります。
 労基法上,使用者は「1日について8時間」「1週間について40時間」を超えて労働者を労働させてはならないとの原則を規定するのみで,労働時間の定義を定めていません(労基法32条)。そのため,今日まで労働時間の起算点や終了点(始業時の更衣,現場までの往復,朝礼,体操,終業後の後始末・シャワーなど)をめぐって争われてきました。
 行政当局は,労基法上の「労働時間とは,一般に,労働者が労働するために使用者の指揮監督のもとにある時間」としており,判例も,作業着等の着脱等の労働時間が争われた事案で,「労基法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」と判示しています(三菱重工業長崎造船事件,最一小判平12.3.9民集54巻3号801頁)。
 したがって,作業のために待機したり,客を待つ時間など,いわゆる「手待ち時間(現実の作業はなく,指示があるまで手待ちの状態となっている時間)」も,当然労働時間として扱われることになります。
 あなたの場合,会社の鍵を開けるための1時間の早出が、単なるボランティアではなく、遅れれば遅刻扱いとなり不利益な処分を受ける場合などには,「手待ち時間」にあたる可能性があります。この場合 使用者は一時間分の賃金=残業手当を支払う義務があります。

回答者プロフィール

小島妙子

ジェンダー法学に詳しく著作も多いすぐれた理論家であると同時に、セクハラ・DV、不当解雇、離婚、財産分与等々、幅広く訴訟を扱う頼りになる実務家。事務所にはほか2名の女性弁護士がおり、女性からの相談の受付体制は万全です。

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