こころ
相談9 同性パートナーのことを親に認めてもらいたいのですが・・・
2011.02.16 Wed
「わたしは、自分以外の他人を気になりだした時からずっと、女性だけを好きになってきた同性愛者です。
高校時代には偶然、彼女との関係を親に見つかり、大学時代には自分から、彼女と同居するからと親にその関係を伝えました。
高校時代は自分の罪悪感からそのことについて話し合うことなく、大学時代には、親からいっさいの電話がなくなり、結局、その時々で彼女との関係を親と真剣に話し合うことなく、年月が経ちました。
また、同居していた彼女との関係が悪化したため、一人暮らしに戻ったので親に電話で引っ越しした旨を伝えたさいに、「若気の至りで、病気だったんだから」と、慰めようとする発言だったのでしょうが、わたしにとっては、親のその言葉を聞いて、自分と恋人との関係については、二度と親には話すことはしない、と自分に誓いました。
ですが、30代になって、真剣に一緒に将来を考えたい、と思う彼女ができました。そこで、思い切ってまた親に伝えましたが、話は聞いてもらえたものの、その後はやはり、会うと緊張するから、などと会うことは拒否され、彼女のこととなると、スルーされます。そういうこれまでの親の態度もあって、わたしももう、親の前では「彼女」という言葉さえ、発することができなくなってしまいました。
あえて、親に彼女を認めてもらおうと思わないほうがいいのでしょうか?今後、お正月など、年老いていく親といることを選ぶのか、彼女といることを選ぶのか、など悩みたくないので、親と彼女は仲良くなってほしいのですが、説得できるとも思えません。自分にとっては、引き裂かれる思いなのですが、親との距離感はどうも埋まりません。なにかよい、アドバイスをいただければ、うれしいです。(30代女性、東京都)
回答
相談9 回答
いろいろ大変でした(まだまだ大変です)ね。
まず伺いたいのは、高校時代にあった罪悪感は軽減したか、消えたでしょうか。性の指向に対する日本の無理解な文化を承知しつつも、申しあげておきたいのは、同性愛者であろうと、ご自分に誇りを持っていただきたいことです。(こんな表現いささか紋切り型ですね)。
もちろん言うまでもなくこれは簡単なことではありません。セクシュアル・アイデンティティはその人のアイデンティティを構成する「大」要素であり、それが揺らげば、自分の基本的自信も揺らいでしまうからです。
今「大」要素と書きましたが、この言葉を私は必ずしも肯定して使ったのではありません。問題は大要素になっていることであって、誰(性も)を愛そうと自由ではないか、といって受け入れることができれば、「大要素」でなく「一要素」になり、もうちょっと社会全体が窮屈でなくなるのですけれど。
親御さんとの関係の困難さはよくわかります。とくにお正月などどちらと一緒に過ごしたいかは、まさしく切実な問題でしょう。ただ、目下のところ、あなたの望まれるように親御さんに認め、受け入れてもらうのは、難しいような気がしますが、どうでしょう。
親御さんが、会うと緊張すると言うのも、客観的立場から言えば、わからなくもありません。スタンスのとりかたが不明なのでしょうから(この分、正直ですね)。彼らがいつまでもこのようであるかどうかはわからないし、 親の看取りも緊急のことでもないようだから、少し距離をおいてはいかがでしょうか。
回答者プロフィール
河野貴代美
アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。