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法律

相談46 :彼との結婚を予定しています。夫婦別姓を貫きたいので事実婚をしようと考えています。

2017.01.11 Wed

彼との結婚を予定しています。夫婦別姓を貫きたいので事実婚をしようと考えています。
彼もわたしも転勤がある仕事で、今も離れて暮らしています。
結婚したら一定期間は配偶者が住む地域で勤務できる会社の制度を利用して(事実婚でも利用できる)、
彼と一緒に暮らそうと思いますが、わたしも彼も今の仕事をやめるつもりはなく、いずれは別居生活になることも覚悟をしています。
両親は「籍もいれず別居しているなら夫婦とは言えない。入籍しなさい」と言います。
別居している事実婚の夫婦でも、夫婦であると証明するにはどうしたらいいでしょうか。
(広島県・28歳・女性・会社員)

回答

回答46 :養父 知美さん(弁護士)

日本の民法は、婚姻の成立を届出主義としているため、婚姻届を出さなければ、法律上の婚姻は成立しません(民法739条)。
民法は、婚姻の効力として、夫婦は同居し、互いに協力し扶助する義務を負うとしています(同752条)。また、夫婦は互いに貞操義務を負うとされ、配偶者以外の者と性的関係を結べば不貞行為として離婚原因となり(同770条1項1号)、慰謝料請求の対象となります。夫婦の財産については、共有推定が働き(同762条2項)、離婚の際には財産分与が(同768条)、亡くなった際には配偶者の相続権が(同890条、900条)認められています。そして、問題の夫婦同姓が定められています(同750条)。

しかし、配偶者としての相続権と夫婦同姓以外については、裁判例の積み重ねにより、事実婚についても、法律婚に準じた効力が認められています。
事実婚とは、法律婚に対する言葉で、婚姻届出はされていないものの、「事実上の婚姻意思のもとに協同生活を営み、社会的にも事実上の夫婦として存在するもの」とされてます。お互いを「夫婦である」と認識しており、夫婦としての協同生活が営なまれていて、親族や周囲の人たちからも夫婦として認知されているような場合、事実婚状態にあると判断されています。判断にあたっては、同居の有無が大きく考慮されますが、必ずしも同居していなくても、「生計を一にする」場合、例えば、仕事や療養等の都合上別居している場合であっても、余暇は一緒に過ごすことにしている場合や、生活費や療養費等の送金が行われているような場合には、事実婚と認められることがあるようです。また、周囲に「夫」「妻」として紹介されている、周囲からも夫婦としての扱いを受けていることも大きいようです。

ところで、「夫婦であると証明する」とは、誰に対して証明したいとお考えなのでしょうか? その結果として、どのような効果をお望みなのでしょうか?
例えば、親や兄弟姉妹、親族など、あるいは友人、職場の関係者などに、夫婦として認めて欲しい、夫婦として扱って欲しいということであれば、挨拶状を送るなり披露パーティーを開くなりして、そのようにお願いしてはどうでしょう。「籍もいれず別居しているなら夫婦とは言えない。」という人に対しては、根気よく説明と説得を続けるしかありません。もっとも、「見解の相違」ということで、放っておくのも一つのやり方だと思います。 
「事実婚としての法的な効力を認めさせたい」ということであれば、前述の事実婚に当てはまるような既成事実を積み重ねて、夫婦連名の年賀状だの、夫婦として出席した冠婚葬祭の写真だの、夫婦の家計簿などの証拠をかき集めることが有効です。

しかし、そもそも「夫婦である」とはいったいどういうことなのでしょう?
夫婦の形は、それぞれのカップルが決めればよいこと。住居も生計も余暇の過ごし方も別々の夫婦、双方が納得していれば第3者との性行為や親密な関係もありかもしれない。同性の夫婦、セックスレスの夫婦、住居も生計も一にしている「アカの他人」。「夫婦」と呼ぼうが、「仲良し」「カップル」と呼ぼうが、名前にこだわる必要もないかもしれない。

お2人の関係は、お2人が決めればよいことです。あなたが望まれることをパートナーの方にまずよく伝え、話合って決めたこと、約束したことについては、「誓約書」を書くなり、「契約書」を交わすなりしておかれるとよいでしょう。また、法律婚でなければ、配偶者としての相続権は認められませんので、どちらかの死後、相手に遺したいものがあれば遺言書を作成しておく必要があります。
これらが、お2人の関係の何よりの証明にもなります。
以上

回答者プロフィール

養父知美

とも法律事務所は、知をもって(法律の専門家としての知識をもって)、友として(あなた自身や家族になりかわることはできないけれど、あなたの力になりたいと願う友人として)、共に(ひとりで頑張らないで、ひとまかせにしないで、一緒に)、問題解決をめざす法律事務所です。

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