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お助けWANは、女性のこころと健康、仕事、法律の相談室です。このコーナーの担当者・回答者はいずれも、女性の心と健康、仕事など、暮らしに寄り添ってきた専門家です。どうぞ、安心してご相談ください。一人の悩みは、同じ悩みを抱える女性たちへとつながります。

こころ

相談65:自分の意志で何かをしたことがなく、不安を感じます。

2017.08.30 Wed

40歳の女性です。年の離れた夫を三年前に病気で亡くしました、その後は一人で生活をしています。夫の健康上の理由で、子供はいませんでした。

若い時はそれなりに恋愛もしましたが、父に賛成されるような男性ではなかったし、自分で決める自信もなかったので、夫とのお見合いの話が来たとき、収入も安定しており、父が気に入ったということで結婚しました。夫は静かな好い人で、義理のご両親も可愛がってくださり、それなりに暮らしましたが、夫を愛していると感じたことはありませんでした。わたしには、そのことに不満も不安もありませんでした。その夫が難病にかかり、病気が分かって入院後、あっという間に亡くなってしまいました。

幸い私の実家がすぐそばなので、毎日実家に顔を出し、それなりに暮らしていますが、最近、なんとなく先行きに不安を感じるようになりました。だからと言って、何をどうすればいいのかもわかりません。経済的な不安はありません。ただ、今まで周りの言うことを聞きながら、何となく生きてきた気持ちがするようになりました。

自分の意志で何かをしたことがない私はこれでいいのだろうかと、最近すこし不安に思うようになりました。私はどうすればいいのでしょうか?(40歳、無職)

回答

回答65:河野貴代美さん(フェミニストカウンセラー)

あなたのご質問は、生きていくうえにおいて相当に根源的というか抽象的な質問であることは自覚されていらっしゃいますでしょうか。そうであるからこそ問われているのだと思いますが、わざわざ確認するのは、根源的であればあるほど、正直、回答が難しいからです。

「今まで周りの言うことを聞きながら、何となく生きてきた気持ち」はよくわかりますし、これでいいのかな、と不安がっておられるのも了解いたしました。とりあえず、それに気づかれたことをよかったと思います。

しかし、ここからが問題なのです。ご自分のことはあまり考えず、親の気持ちを重要視し、したがって自己主張もなさらなかった長い期間。これからどうしたいのか、といきなり自問されても答えはなかなか見つけられないかと思います。

そこで、私の提案。「どう生きたいか」は一旦おいて、具体的で、身近で、些細な事柄について、一つ一つ「自分はどうしたいのか」と考えてみることです。たとえば、うどんかラーメンかどちらがよいか、も他者任せにせず、自分は?と自問し、それを相手に伝えること。一人だとこんなことは問題にもなりませんが、お相手がいる、そこでの主張が重要なのですね。このあたりのご自身の指向性をおろそかにしてはいけません。時間をかけて(これが大事)丁寧に「自分を大事にする」ことを身につけられたら、そのうち少しづつ、何かが見えてくるかもしれませんね。途中で諦めてしまわないことを願っています。

回答者プロフィール

河野貴代美

アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。

タグ:くらし・生活 / 河野貴代美 / フェミニストカウンセリング