2017.11.12 Sun

大学の講義で愛知県の最低賃金が845円ということを知りました。私の母は今、845円以下で働いています。母はお店の人との関係を荒立てたくないのか、諦めているのか、言う気はないようです。私に何かできることはあるでしょうか。
　（愛知県、学生　20代）

1. 最低賃金制度について
大学で、最低賃金制度について講義を受けられたとのことなので、既にお聞きになっているかと思いますが、最低賃金法という法律により、国によって賃金の最低額が決められています。
最低賃金額は、都道府県別の地域別（地域別最低賃金）と、特定の仕事内容に定められた業種別（特定／産業別最低賃金）の2種類がありますが、同じ地域、同じ業種であれば、年齢に関係なく、正社員もパートもアルバイトも、すべての労働者が同じ金額です。また、地域別と業種別のどちらか高い方の金額が適用されます（最低賃金法6条1項）。
地域別最低賃金は、毎年10月に更新されます。業種別ものは12月頃に更新されるようです。ちなみに、今年10月1日付で更新された愛知県の最低賃金は、871円（＋26円）です。
使用者は、最低賃金額以上の賃金を支払うよう義務付けられており（同法4条1項）、賃金以下の賃金の取決めは無効とされ、最低賃金額での取決めがされたものとみなされます（同条2項）。つまり、時給800円の約束で働いたとしても、最低賃金が845円であれば845円の約束だったとみなされ、労働者は使用者に時給845円を請求できます。また、使用者がこれを支払わなければ、使用者は50万円以下の罰金に処せられます（同法40条）。これは刑罰であり、最低賃金を支払わないことは犯罪です。
最低賃金法は、地域別最低賃金が生活保護の給付水準を下回る逆転現象の解消をめざして、2007年11月22日に改正されました（施行は2008年7月1日）。つまりそれまで、働いているのに、生活保護給付額（健康で文化的な最低限度の生活水準を営める額）以下の賃金しか支払われないことがまかり通っていたということです。そんなのオカシイ！ということで、この改正により、最低賃金は年々UPされるようになり、違反した場合の罰金も2万円から50万円へと大幅に引き上げられました。

2.　何ができるか
というわけで、最低賃金との差額を支払うよう、使用者と交渉してください。過去の分についても遡って請求することができます。ただし、各支給日から2年で時効にかかってしまいますのでご注意ください（賃金請求権の消滅時効　労基法115条）。使用者が支払いに応じないようであれば、もよりの労働局または労働基準監督署に相談してください。前述のとおり、刑罰権を背景にした強い監督権限を持っています。その際、給与明細等、時給額や勤務時間がわかる資料を持参してください。
ただし、行動すべきは、お母様自身です。あなたは、あくまでサポーターです。お母様の意向を無視して、勝手には動かないでください。お母様に、この回答を読んでいただくか、下記の厚生労働省サイトから「最低賃金制度パンフレット」をプリントアウトして読んでもらってください。お母様を勇気づけ、支援してあげてください。
最低賃金以下で働かされているのは、お母様だけでなく、お母様の同僚もではないですか？　であれば、同僚にも声をかけて、一緒に行動できるといいですね。地域労働組合（ユニオン）に加入して、労働組合として交渉してもらうという方法もあります。
時給71円×〇〇時間は、大きいですよ。　頑張って！
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/H29_saiteichinginpamphlet.pdf