こころ
相談70:退職をしてから、毎日が虚しく感じます。
2018.07.25 Wed
60代の主婦です。10年ほど非正規の職員で働いて、今年の3月に退職しました。仕事をしていた時は時間がなかったので、辞めたら若いときに習いたかったことをやろうと、4月からシャンソンを習い、水泳に行き始めましたが、なんだか、死を迎えるための大いなる暇つぶしのような気がして、虚しくなってきました。
お友達は放送大学に行ったり、大学に入り直したりして勉強しているのですが、私は目標もなく勉強する気にもなれず、毎日、朝おきて、朝食を食べて、本を読んで、昼食を食べて、買い物に行って、夕食を作って食べて、という単調な生活に飽きてしまい、なんだか、もう死んでもいいなと思うようになりました。
元の職場の人たちは優雅でいいね、羨ましいとか言ってくれるのですが、元同僚が忙しく働いているのを見ると、私のほうが羨ましくて、眩しくて、会いにいく気がしません。もう少し前向きに行かなきゃ、とは思うのですが、落ち込んでしまってなかなか気分が晴れません。気持ちを前向きにするためにどのようにすればよいか教えていただきたいです。(宮城県、60代主婦)
回答
回答70:河野貴代美さん(フェミニストカウンセラー)
まず、お気持ちはよくわかると申し上げておきます。多くの男女が、定年退職後、あなたと同じような気持ちを持て余しているというようなことは、お聞き及びでしょう。かつて常に妻にくっついて歩く、そのような男性を揶揄して「ぬれ落ち葉」とかいわれましたよねぇ。現在でも事情は変わらないのではないでしょうか。ただ、働き手の不足などで、男性は80代でも就労中というような報道に接することもあります。女性の場合はあまり聞きませんが。あなたが就労を目的とされるなら(それとていつかは辞めなければなりませんが)一度ハローワーク等を尋ねてみるのはいかがでしょうか。
ただ、少し気になることを申し上げておきます。
それは仕事=生産性にとても大きな価値を置いておられることです。これ自体は間違ったことではありませんが、高齢が進めば、このような価値観を変えていかなければ躰自体がおいつていけない現実が立ちあらわれます。少しづつこのような変化をご自分で受け入れてみようとされるのはどうでしょうか。で、仕事と「文化生活」のあいだにボランティアなどを入れてみるのはいかが?ただ、私などは「人生は退屈とムダで成り立っている」と思っており、それをどうなだめるか、というかどう付き合うかが、その人の人生を創造すると考えています。あまりにも退嬰的すぎるでしょうか。
回答者プロフィール
河野貴代美
アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。
タグ:くらし・生活 / 河野貴代美 / フェミニストカウンセリング / 相談
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