こころ
相談76:文化祭のコスプレ(女装)をやめさせたいのですが
2019.09.19 Thu
高校教員です。文化祭でのことで相談です。
本校では、文化祭でコスプレが認められています。先日の文化祭で、数人の男子生徒が女子生徒に制服を借りて女装していたので注意をしたところ、「生徒会は女装OKと言ってます」とのこと。生徒会の生徒にその事を確認し、女装を認めるのはどうなのか?と尋ねると「ではどうして女子の男装はよくて、男子の女装はダメなんですか?」と逆に質問されました。
生徒会の先生も「歌舞伎とか宝塚もあるから、生徒に女装と男装の違いを説明するのは難しい。だから女装だけを禁止にするのは難しいんです」と言われました。私の感覚が間違っていたのかと他の先生方にも意見を伺うと「あれは見苦しい」と言ってくださる先生もいましたが、「女装の何がダメなんですか?」と素朴に問い返してきた先生もおられました。
面白半分で女装している(ように見える)生徒やそれに疑問を持たない先生に対して、どのように説明したら理解してもらえるでしょうか。それとも女装を見て気分を害している私の感覚のほうが間違っているのでしょうか?来年の文化祭にまた同じ思いをしないためにも、ぜひ教えていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(まさ・堺市・52歳)
回答
回答76:河野貴代美さん(フェミニストカウンセラー)
私の理解する限り、コスプレとは、誰が何(人間に限らず)になってもいい、ということですが、あなたはどう思っておられるのですか?中でも、女装や男装は一番の人気ではないでしょうか。するのが安易だからでしょう。異性の服を借りればいいのですから。
女装・男装は、今でこそ異端視されることはなく、私の感覚では結構受け入れられていると思いますが、「異性装(トランスヴェスタイトと言います)」として、かつては精神医学的に「異常性愛」に含まれていました。1975年ごろ、同性愛と同じく、異性装も世界的精神医学診断の「異常」基準から外されました。
なぜだかおわかり?理由は簡単です。「彼/女」たちが「普通」の人と同じく「普通」に暮らしているからです。
この私、実は香辛料や匂いのある料理が食べられませんし、嫌い。人からは「オコチャマ」と言われます。どういわれようとなぜと聞かれようと、理由なんて言葉になりません。嗜好(志向・指向)の違いにすぎないからです。それでも「普通」(単に表面上マジョリティにすぎない)でない人たちの存在を「気持ち悪い」「おかしい」と感じる人がいます。ただ、これは申しておきたいのですが、いくら「見苦しい」「気持ち悪い」「異常」とか思って無視したり、否定しても、そういう人々が存在することは事実です。そして「普通」の市民として働き税金も払い、人々と仲良く暮らしています。
私は「女装をみて気分を害している」あなたを咎めるつもりはありません。ただ、大事なことは、教師として多様な生徒のいること(表面上は見えないことも多い)をよく考え、対処してほしいと思います。いじめだって、メディアの報道のように、なになかなか表面化しないでしょう?社会全体が不寛容になっていることを懸念しています。
回答者プロフィール
河野貴代美
アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。
タグ:くらし・生活 / 河野貴代美 / フェミニストカウンセリング
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