お助け情報

お助けWANは、女性のこころと健康、仕事、法律の相談室です。このコーナーの担当者・回答者はいずれも、女性の心と健康、仕事など、暮らしに寄り添ってきた専門家です。どうぞ、安心してご相談ください。一人の悩みは、同じ悩みを抱える女性たちへとつながります。

こころ

相談79:「パパ活」というものをしています

2020.04.28 Tue

社会人26歳です。26年生きてきた中で、女性であるからこそ受けるセクハラや痴漢など、理不尽な経験を一通りはしてきました。大学時代は、母親から言われた「女の子だから」という理由で門限があり、サークルでの飲み会や遊びに参加できず、女に生まれたことがこの世の終わりであるかのように感じていました。

現在、学業、アルバイトともに忙しくないこともあり、「パパ活」というものをしています。パパ活というのは、おじさんと食事へ行き、お手当をもらう活動のことです。40代〜60代のおじさんと食事を重ねるうちに、ほとんど例外なく、体の関係を持ちたいと言われるようになります。その言葉が出れば、ゲームオーバーとなり、私は相手との関係を断ち切ります。同じことを繰り返す内に、快感に似たようなものを感じ始めていることに気づきました。

この活動を始めた理由は、お金がないからではありません。上野先生の「女ぎらい」を読み、言語化することができたのですが、"女を侮蔑する男に対する徹底的な侮蔑からである"ということに気づきました。お金で買おうとする男性という生き物が気持ち悪くて仕方がないのです。女に生まれたから仕方ないと制限されてきた過去と、男性から受けた理不尽な経験の両方が合わさってこのような自分がいるのだと、内省を繰り返す中で結論を出しました。自傷行為のようにも感じています。苦しいです。

フェミニズムについてもっと勉強したいし、もっと広い世界を見たいと思っているのに今は抜け出し方がわかりません。解決策が欲しいのではなく、誰かに聞いて欲しいだけなのかも知れないと思い、誰にも話せず今に至ります。厳しいお言葉をいただきたいと思って相談させて頂きました。よろしくお願いいたします。

末筆ながら、Women's Action Networkのさらなるご発展、皆様のご活躍をお祈り申し上げます。(りさ・大阪市・26歳)

回答

回答79:河野貴代美さん(フェミニストカウンセラー)

りさ様

何度も読みかえし、あなたが何を訴えているのかくみ取ろうとしましたが、上手くいったかどうかわかりません。回答というより感想です。

まず、女性であるがための様々な差別やハラスメントを被り絶望的になっているということは、よくわかりました。その事態を改善するために私達はWANに集まり様々な活動をしています。これは釈迦に説法ですね。ごめんなさい。WANへのエールもありがとうございました。

ところがよくわからないのは、嫌悪を感じながらも「パパ活」をして、それが快感になるというところです。快感とは、嫌悪や侮蔑の代理ですか? 

心理学用語の防衛機制のなかに「反動形成」という動きがあります。本当は憎んでいるのに愛していると感じ変えることですね。それは憎んでいるという感情を持つことが辛いから。でもおわかりのように、これは無理スジだから愛(あなたなら快感)というか、防衛なので、純粋な感情ではない。こんな交代感情を持続していると、自分の本当の感情が「なにであるか」がわからなくなり、これは苦しいですね。

あなたの苦しさの実態は、正直よくわかりません。「抜け出し方」については、単純に「パパ活」をやめてみることをお推めします。で、自傷行為であるとわかっておいでだから、この感情がどうなるかを感得してみるのはいかが?自傷行為を止められないほど自罰的であるなら、これについてはもう少し深い理由があるような気もします。考えることが十分にお出来になるようですから。そうでなくてもフェミニズムには飛びついてみてください。得るものがあると思われますよ。

上野さんの『女ぎらい』には、"女を侮蔑する男に対する徹底的な侮蔑からである"という表現がありますか?あなたの「男嫌い」を表現してくれた言葉だとしても、内容は、社会構図のなかの分析的志向があり、それをもう少し客観的に読み取れるといいのに、と思いました。

いつかWANの全国大会で拝顔したいものです。ごきげんよう。

回答者プロフィール

河野貴代美

アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。

タグ:河野貴代美 / フェミニストカウンセリング

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