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お助けWANは、女性のこころと健康、仕事、法律の相談室です。このコーナーの担当者・回答者はいずれも、女性の心と健康、仕事など、暮らしに寄り添ってきた専門家です。どうぞ、安心してご相談ください。一人の悩みは、同じ悩みを抱える女性たちへとつながります。

こころ

質問80:夫との関係で悩み、死にたいと思うようになりました

2020.05.12 Tue

夫との関係で悩み、死にたいと思うようになりました。この先どういう心持ちでいるべきでしょうか。二人の子どもがいますが、やればやるほどに仕事が楽しく、毎日精一杯、育児、家事、仕事をやってきました。会社では残業できず早々と帰る後ろめたさを抱え、子供には家でゆっくり一緒にいてあげられないばかりか、「早く」が口癖なことに申し訳なく思う。発熱時や仕事で遅くなるときにサポートをしてもらう実母には、感謝と共に自分が働くばかりにシワ寄せがいっていることに申し訳なく感じました。夫は当たり前のように残業ができ、好きな時に飲みに行けると、自分はこんなにやってるのにと、犠牲者のように感じてきたように思います。

夫は家事を手伝ってくれることもありましたが、役割分担をしているわけではなく、ほぼ私がやってきました。それに対してもっとこうしてほしいとか言えば良かったのかもしれませんが、定期的に怒鳴られてきたので、爆発されるのが嫌で自分がやれば済むと思ってやってきました。そんな中、私が先に昇進し、それが気にくわなかったのか人格を否定するようなことまで言われました。

それから、私はそんなに責められるほど悪かったのか?こんな家族関係になって子どもに申し訳なく、私が自分のやりたいこと(仕事)をあきらめられないから悪かったのか?私はどうしたら良かったのか?と思い悩み、死にたいと思うようになりました。

夫とは離婚する方向で話していますが、自分がこんなだから子どもに辛い思いをさせてしまうと自分のことを責めて躊躇してしまいます。どうすれば自分を大切にして前向きになれるでしょうか。(京都府・37歳)

回答

回答80:河野貴代美さん(フェミニストカウンセラー)

質問が投稿されたときは、「死にたい」ほどのお気持であったかもしれませんが、今は、いかがでしょうか。というのは、死まで思いつめるような気持ちであっても、翌日は、ちょっとした状況の変化で「まあいいか」というような妥協的な気持ちに変わっていたりするからです。

そこで、このように浮遊する気持ちのなかで、今回は最悪の気持ちに沿って考えてみたいと思います。拝読して夫との関係は、それなりに悪くなかったようですが(仕事も家庭も楽しくやってきた?)、あなたの昇進で変化したと受け取っていいですか?彼はあなたの苦労など顧みず、勝手に振舞っている、と?そこで離婚の話にまでなっているが、罪悪感とか親への感謝等、お気持ちがよくわからなくなっているのでしょうね。

仕事する女性にとって、本当に「仕事か家庭か」は古くて新しい問題です。よくわかります。で、「最悪の気持ち」に戻りましょう。ここで特徴的なのは、自責感ですね。職場にも子どもにも、悪いのはあなた。この自責感は、どこから出てきているのでしょうか。子どもがそれをとても嫌がっていますか。職場は、困ると言っていますか。つまりこのような客観的事実より、「私が悪い」が先行しているように私には思われます。なぜ、すべてあなたが悪いと感じるのかを考えてみてください。

夫にも、自分がやれば済む、とおっしゃっる言動のように、たえず、ご自分を悪者にしてきたようですね。これですべてが常にうまくいってきましたか?決してそうではないでしょう?この自責感や罪悪感は、きっと結婚以前の親との関係から生まれているとも思われますが、一般的に、女性らしさ(ジェンダー)の問題でもあります。私は「電信柱が高いのも郵便ポストが赤いのも、みんな私が悪いのよ」と言って、女性自身の悪者視を指摘してきました。そうです、悪いのは、お分かりのように「これまで言ってこなかったあなた」です。ジェンダーに縛られないで、思い切って主張なさってください。怒鳴られてもドキッとするだけだで死にませんし、世界は崩壊しません。

回答者プロフィール

河野貴代美

アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。