こころ
相談81:結婚を前に立ち止まっています
2020.06.05 Fri
私は都内で保育士をしている者です。4人姉妹の長女で、母はわたしの出産を期に退職し、四女が高校入学するまで専業主婦という環境で育ちました。
幼い頃から、母に「私は本当は働いていたかったけど、それができる社会ではなかった」と言われてきました。母は4人の子どもをワンオペで世話することに疲れ、私が小学生から大学に入学するまで母の笑顔はほとんど見られず、母が実家に泊まって祖父母や叔母達と話している時のみ笑顔を見られるという状況でした。ほかにも塾の先生など、私が見てきた女性たちは社会の流れで仕方なく結婚し子どもを生んでいるんだと認識し、気がつくと、女性を被害者のように見ていました。
育児に悩む女性を助けたいと保育士の仕事を選びましたが、そこでも母親の大変さがとても目立ち、父親は何故こんなに第三者的な立場で自分の子どもや家事などを捉えているのか不思議に感じ、人はなぜ結婚するのか、子どもを産もうと思うのか本気で分かりませんでした。
実はこの度、結婚が決まりました。ですが、彼氏がLGBTや女性の働き方、主婦、社会的弱者などへの理解が少なく、どんなに伝えようと話しても理解しようとする姿もなく、その度に気持ちが冷めていく自分を自覚しています。苗字に関しても、「結婚で苗字が変わるのは仕方ないんじゃない?」と当たり前のように言われ、生まれてから今まで呼ばれた名前をそんな風に捉えられる事に悲しみを感じます。悲しいと言うことを何度も話しましたが、答えは出ませんでした。こちらの感情は大切にされません。
まだ同棲もしておらず、会っていると大丈夫な事が多いのですが、1人になると、自分ひとりの時間も無くなるし、なんで結婚しなきゃいけないんだろう、なんでみんな結婚出来るのだろうと思ってしまい、何もする気になれません。プロポーズされてから1年間、結婚について悩んでいます。マリッジブルーになることも伝え、様々なことについて何度か話したのですが、話を理解しようとしない姿などに気持ちがどんどん冷めていきます。どうすれば良いのでしょうか…。
(ぽん・29歳・目黒区)
回答
回答81:河野貴代美さん(フェミニストカウンセラー)
ぽんさま
あなたは、現在29歳でそれなりに仕事もあり、理性もおありだと思いますが、まず結婚をどのように考えていたのでしょうか。それは他者に聞くことではなく、ご自分が望むものであり、考えることだと思いますが。
それにつけても、なぜ結婚を考えた「後」に、相手の価値観が違うことがわかり、なぜ、あなたの平等感覚にも考えすぎだというような方を配偶者にしようとなさっているのでしょうか。これはなぜ「前」でなかったのでしょうか。
苗字の変更やLGBTにもまして、相手の性別役割分担意識(男は仕事、女は家事。育児への考え)はどうなのか。母上の不満は話し合われました?あなたの仕事の継続や子どもを持つことについてはどうなのでしょうか。
たしかに、女性は被害者でしかないじゃない、と思ってしまう現状があることはよくわかります。
結婚後の先の時間こそ、本当は一番考えなければならないはずなのに、結婚をゴールと思う人が、スタートと思う人より多いことは残念で、あなたはそれを避けるために考えておられるのでしょう。「プロポーズされたから応じた」のでなければ、ご自分の結婚観にじっくり付き合ってみてください。他者(私も含めて)の意見は参考にならないと思います。結婚されるのはあなたなのですから。
回答者プロフィール
河野貴代美
アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。
タグ:非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / 河野貴代美 / フェミニストカウンセリング
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