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こころ

相談18「親にかまわれずに育った寂しさを埋めあわせたい」

2012.02.24 Fri

私には幼い頃から親に面倒をみてもらった記憶がありません。二人の弟と妹がいますが、すぐ下の弟は年子で、親は弟の育児で一杯だったこともあり幼い時から何でも自分でするしかなく、また、頑張ってやって親に認めてもらおうとしていたのだと思います。
おかげで小学校の時から同じ年の子どもたちと比べるとしっかりしていたと思いますが、そのせいか私にはどうしても人に対してかまいすぎるところがあります。友人のすることが幼く見えて、つい弟や妹にしてきたようにかまってしまうのです。弟や妹にとってはそれが「当たり前」だったので私の言うことを聞いていたのでしょうが、友達はそうはいかず時にこれが人間関係のトラブルのもとになってきました。
最近になってようやく、自分が人のことをかまい過ぎることや人に対しては距離の取り方があるということが分かってきたのですが、他の人たちが親にどんなにかまわれて育ってきたのかを知るにつけ、とてつもない寂しさと不安を覚えます。子どもの時代に親からかまわれずに子どもらしい経験をしなかった者は、どうやってそれを埋め合わせていけばよいのでしょうか?

回答

相談18 回答

あなたはご自分のことをよくおわかりですね。
せっかくしてあげたのに、という恨み節じゃないところがいい、ホント。
問題を二つにわけましょうか。一つは人との距離のとり方。これはとても難しいです。近ずきすぎるとそれこそ一心同体ができあがり結果引き剥がすために喧嘩になったり、遠すぎると、関係すら持てません。昨今の若者が面倒だということであまり親密な関係をもとうとしない、とはよく言われているところです。つまりは誰にとっても大変困難な事柄なのですね。
で、上手な関係の作り方は、多分親に充分かまわれたかどうかより、子ども時代からどのように別の子どもと付き合ってきたか、その体験によるのではないかと思います。成功あり失敗あり、それによる自ずからの修正ありとかで少しずつ学んでいく。成功をうれしそうに親に話したり、失敗をなぐさめてもらったりしつつも、このような関係の経験を促してくれる、という意味で親の存在は、たしかに大きいでしょうが、100%ではありません。
あなたはご自分がどうも距離を縮じめたがる傾向があると承知しておられるのですから、これを機に学んでいこうと思われてはいかがでしょうか。いつからでも遅すぎるということはありません。他人にかまうのは、ひょっとして「ありがとう」と言ってもらいたい気持ちがあるのかも、
ということもおわかりでしょうし。
もう一つの不安や寂しさですが、関係がうまくいかないことからくる孤独の、という意味ですか? 誰かを好きになりなさい、誰かから好きだと打ち明け
られたら、思い切って受け入れてみては? こう言うのは簡単ですよね。私はもうすぐ73歳になります。親にも愛され、仕事、健康、人間関係にも
恵まれ幸せな人間だと思います。それでもつくづく、寂しいなあと思いますよ。
どのような状態であろうと、生きているということに張り付いている寂寥感のようなものは、拭いがたいと感じる。たしかに年のせいもありますが。
世界にたった一人でも、私だけはあなたの想いに心から共感する、と言うのはダメ? 古い人ですが、ジョルジョ・ムスタキというフランスのシンガーソングライターに「もう孤独ではない」という歌があります。これまでとても寂しくて泣いた日々があったけれど、僕のそばに寄り添うように居てくれているのは、孤独。孤独と二人になって僕はもう寂しくない、という歌。日本語訳の歌詞もあるからどこかで聞いてみて。

回答者プロフィール

河野貴代美

アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。