こころ
相談36「両親の用意したレールに乗った人生は嫌です」
2013.06.30 Sun
両親ともに医者の娘(一人っ子)です。
ずっと昔からの開業医で、二人とも当然、わたしも医者になって
医院の後を継ぐのだと思っているのですが、それに耐えられません。
これまで、私立中学から進路は全て親が決めてきて、
(っていうか、親が出た学校に行かされただけなんですが)
わたしの考えとか希望とかは、二人の頭に皆無、って感じでした。
養ってもらっている以上、文句は言えないと思ってきたけど、
やっぱり、このままレールに乗った人生を送るのは嫌です。
かといって、自分に何ができるかも分からないままですが、
本当は法律とかにも関心があるのです。
今はもちろん、有無を言わせず理系ですけど、、、。
この、自分の人生じゃないような感じを抜け出すには、
親の意に反して反抗するより他にないのかな、、、と思ったりします。
なんか、親の意に染まるか反抗するか、白か黒しかないのかな、、、
と思うと、それだけでぐるぐる、考えが煮詰まってばかりです。
とても大事に思われているのはわかります。なので、よけいにつらいです。
来年には、大学受験のために本当に進路を決めないといけません。
心を整理するために、何かアドバイスをいただけたら嬉しいです。
(ルフィ 10代 東京 女 高校生)
回答
回答36
ルフィさん、ちょっと古い映画ですが、
ロビン・ウイリアムズ主演(教師)、ピーター・ウィアー監督「いまを生きる」ってご覧になりましたか?
内容はハーバード大のような有名私大に行くために、
受験教育を強いる宿泊制の男子高校(プレップスクールと言います)で起きた話です。
主人公の高校生は疑問もなく勉強に励んできました。
そこに、「君たちは一体どんな人生を送りたいのか」と自問するよう促し、
またそれに即したユニークな授業をする教師が赴任します。
一高校生の主人公は、やがて演劇に目覚めます。
それを知った父親は、どのような思いで教育費を出しているのかと叱りつけ、
陸軍学校に編入させると脅し、あれやこれやをもって元のルートに戻そうとします。
この教師も主人公の悩みの深さを充分知ることなく、彼は自殺してしまいます。
それを理由に教師は辞任に追い込まれ、学校を去っていきます。
この間、いろいろなエピソードがありますが、それは省略しました。
あなたの相談を読んで私はすぐにこの映画のことを思い出しました。
ビデオがあるでしょうから、ぜひ見てください。
この映画の強い主張は、人生何があるかわからない、
後悔しないように「いま」をこそ「考える=生きる」重要性でしょう。
ところが映画の主人公がやりたいことを貫いて、その後何もなく長い人生を歩むとすれば、
演劇という選択(普通なかなか食べていけません)でよかったのかと迷うかもしれないのですね。
弁護士か医者になっておけばよかった、と後悔するかもしれません。
でもそれは誰にもわかりません。
人生の長短の、誰にもわからないことが、誰にとっても悩みになります。
普段人々は、考えてもいなかった津波でいきなり人生が中断しても、
そんなことは自分には起こらないと思って(思いたがって)います。
一般論でごめんなさいね。
で、あなたですが、ルフィさんあなたは、人生の選択を自分ができないことが問題なのか、
医者になることが問題なのかどちらでしょう?
拝読すれば両方のようにも聞こえます。これは一度充分考えてみてください。
ただ、私が気になるのは、人生の長短にかかわらず、人生は自分なりの選択の連続だということです。
人に選択をあずけるわけにはいかない、自分の人生ですから。
言われたとおりしたら〇〇(否定的)になったと嘆いても、どうしようもありません。
だから親たちと話し合いをしてほしいのです。
喧嘩にならなくてもいいのですが、あなたには喧嘩的に親に訴える方法しかないでしょうね。
喧嘩腰でない話し合いはありますが、それはすぐにはできません。訓練がいります。
あなたの親はいきなり押さえつけようとするでしょうから。「おまえなんか何もわかっていない」と言って。
例の高校生に、死ぬくらいなら親に訴えればいいではないか、と誰も思うでしょう。
でもこれは彼にとってムリなことだったのです。ず~っと親のいいなりのいい子をやってくれば、
いきなり親に反論を期待するほうがムリなのですね。そんな力が育っていません。
だから彼の攻撃や絶望は自分に向かいます、自死という形で。
医者になってもならなくても、結婚(非婚)とか家庭とか
あなたの人生には決断が待っていると思っていただいていいでしょう。
これから少しずつ、自分主張をするという訓練をしていこうと思ってください。
決してすぐにうまくくことを期待しないで。けっして諦めないで。あなたの人生なのだからと思って。
映画の話をしたから、長くなりました。
意義ある歩みを願っています。
回答者プロフィール
河野貴代美
アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。
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