健康
相談1:更年期と血圧は何か関係があるのでしょうか。
2012.09.26 Wed
50歳、女性です。先日、職場の健康診断で「血圧が高い」との診断を受け、
近くのクリニック(内科)を受診しました。
その際、50歳ということで、更年期の影響もあるので血圧が高くなるとのことでした。
また、投薬をすると一生、薬を飲み続けなくてはならなくなるため、
「しばらくは様子をみる」ということで、毎朝・毎晩、血圧を測り、
2週間に1度、クリニックに通うことになりました。
そこで、おたずねですが…。
更年期と血圧は何か関係があるのでしょうか。
回答
回答1:内田宏美先生
更年期になると高血圧になるのかという質問です。また、文面から、「しばらく様子をみる」というクリニックの方針が腑に落ちていないとも受け取れました。その2点について回答します。
まず1点目です。高血圧は更年期障害の代表的な症状の一つです。閉経する時期になると、女性ホルモンの働きが低下してホルモンバランスが崩れ、自律神経の調整が上手くいかなくなります。何かのストレスがかかると、交感神経の活動が亢進し、イライラして精神的に不安定になったり、のぼせや動機、息切れ、血圧の上昇などの身体の不調をきたしたりします。糖尿病や高脂血症などの生活習慣病がなく、更年期になって緊張した時などに急に血圧が高くなるような場合を、「更年期高血圧症」と呼んでいます。更年期の全ての女性が高血圧症になるわけではありませんが、比較的ポピュラーな症状です。
2点目です。クリニックのドクターは、あなたの血圧が高いからといって、いきなり血圧を下げる薬は使わずに、平常の血圧を継続的に測定して、あなたの本当の血圧を把握しようとしています。血圧の上昇がストレスに反応した一時的なものか、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病を併せ持っていないか、そして、薬が必要かどうかを見極めるためです。これは、「高血圧治療ガイドライン」にそった適切な対応です。
高血圧が持続して血管の壁が堅く厚くなると、ますます血圧が高くなります。また、糖尿病や高脂血症を併せ持っていると、血液がドロドロになって心筋梗塞を起こしやすくなります。反対に、薬で無暗に血圧を下げすぎると、血液の流れが悪くなり、脳梗塞や心筋梗塞を招く危険があります。高齢者では、痴ほう症状が急速に進んだりします。血圧は高すぎても低すぎても問題なのです。ですから、普段の収縮期血圧(上の値)が180mmHgを超えるような重症の高血圧でない限り、また、糖尿病や高脂血症を併せ持っていない限り、いきなり薬で下げることはせずに、“治療はまず生活改善から”が基本となります。まずは、食塩制限7g/日、適正体重の維持、アルコール制限、コレステロース摂取を控える、有酸素運動、禁煙等の生活習慣の修正や改善を行います。これで効果がなかった場合に、初めて薬による治療の適用になります。血圧を下げる薬にも色々あります。生活習慣の改善にしろ、薬物治療にしろ、あなたの生活や体質に合った選択をすることが重要です。主治医や担当の看護師によく相談して、納得の治療を進めてください。
内田宏美(島根大学医学部看護学科)
回答者プロフィール
内田 宏美
1976年京都大学医学部附属看護学校卒業。手術室、循環器内科、放射線科、消化器外科など、大学病院で臨床経験を積んだ後、医療技術短期大学部専任教員となる。2000年の京大病院エタノール事故の後、初代の総括リスクマネージャーとして医療安全システムの整備に携わる。その後、鳥取大学保健学科を経て、2005年より現職。専門は看護管理、医療安全、医療倫理など。
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