法律
相談 4:外国人夫婦の離婚届について
2011.11.21 Mon
A国からの留学生で,大学院で勉強しています。夫(夫はB国人です)とは,2歳の子どもがいます。
2人とも留学中の日本で出会い結婚し,家族3人で日本で暮らしています。しかし,夫は,子育てに関心が無く、「自分の自由な時間がほしい」、「子どもがいるせいでゆっくりできない」と言い始めました。
先日,夫は,「法的効果は無いが、自分が自由な気持ちになれるから」と言って,私に,日本の離婚届にサインしてほしい,と頼みました。
私は離婚する気持ちはありませんが,拒否したままだと、余計に夫との関係が悪くなることを恐れて、サインしました。
夫が言うように、離婚届にサインしても,特に何も問題ないのでしょうか。
(大阪,D)
回答
相談 4:回答 打越さく良さん(弁護士)
ご夫婦ともに外国人で,A国,B国と,国も違うのですね。お二人とも,日本に「教授」「研究」等の在修資格(入管法別表1)を有して5年以上滞在していらっしゃるのであれば,日本に「常居所」(常日ごろ居住している場所)があるといってよいでしょう。
夫婦の共通の本国法がない場合(夫婦の国籍が異なる場合)で、夫婦の常居所地が同じときは、その常居所地の法律が適用されることになっているので(法の適用に関する通則法27条・25条),日本法が適用されます。
もしあなたの夫が勝手に離婚届を役所に持って行ってしまったら,受理されてしまいます。後から離婚は無効だとして調停や裁判で争うこともできますが(家事審判法17条,18条1項),立証するのが大変です。
そんなことにならないよう,前もって離婚届の不受理の申出をしておくと,離婚届の受理が阻止できるのですが,どちらも外国人同士で戸籍がない場合には,この制度が利用できません。
提出されることのないよう,取り戻すことをお勧めします。
彼が単に「自由を感じたい」ということならば,他の方法を話しあってはいかがでしょうか。
■打越さく良■
回答者プロフィール
打越さく良
事務所は女性弁護士が5人。事務員さんも全員女性で、あたたかく笑いのたえないところに身をおいているので、過酷な事件にもめげずに立ち向かっている。離婚、DV事件、子どもの面会交流などを多数担当。また日弁連家事法制委員会,両性の平等委員会委員でもあり,家族法改正ロビイングにいそしむ。 著書に『改訂版Q&ADV事件の実務 法律相談から保護命令・離婚事件まで』(日本加除出版)