こころ
相談No.3 「好きなんだけど、時々、重たい母のような姉」
2010.10.08 Fri
私は49才女性、6歳上の姉がいます。姉は、病弱であった母親の代わりに私と兄(姉にとっては弟)の面倒をよくみてくれました。私には子どもが二人(息子)おりますが、子どものことも大層、可愛がってくれましたし、それぞれに就職して一人住まいの今も、とても大事にくれます。姉はたまに子どもたちにも宅急便で食べ物などを送ってくれますが、先日、息子は帰宅時間が遅く受け取りができないまま放置していて宅急便屋さんから送り主である姉のところに連絡が来たそうで、それで私のところに「一体、どうなってるの?」と姉が大慌てで連絡してきました。
息子はいつもこういう調子なので私は慣れているのですが、姉には子どもがいないのと、身内に対しても几帳面な姉には身内には横着な子どもの行動が分かりにくのだと思います。とはいえ、成人して、ましてや一緒に住んでいない子どものことを言われても困るという感情が先に出てしまって、「私に言われても、分からない」とつい言ってしまい、姉もまた感情的になり「もういいい」と怒ってしまいました。
姉は決して「親のくせに」と言って怒っているのではなく、宅急便屋さんに対して気の毒なのと私の息子のことが心配でそれを私にぶつけているだけなので、私が上手に受け止めれば得心するのですが、それが私にはうまくできません。他人ならいかに成人した子どものことであれ親としてそれなりの応答をしていると思いますが、私にとっても姉はいまだに姉であると同時に母なのだと思います。また、姉は他に自分の感情をぶつけるところがないからか、舅のことなどよく私に話します。同じ話の繰り返しでちょっとうんざりしますが、聞いて欲しいだけなので批判的なことを言うと怒ります。
年齢とストレスのある生活からか、最近、特に感情的な言い方が増えているように思いますが、姉はからっとした性格なのでそうして怒ってもあとに引きずることはありません。でも、私はその後、少しつき合うのが億劫になってしまい、そうなる自分がとても嫌です。
時々は重苦しい姉との関係ですが、私は姉のことが大好きですし、姉妹でありながら母の役目まで負わねばならなかった姉のことを思うと切なくなります。だからとても大切にしたいので、私にしか話すことができない姉の言うことをもう少し上手に聞ければと思います。友だちに相談しても「姉妹なのに親子のような関係がおかしい」と言われるのですが、私が聞きたいのはそんなことではなく、姉を大事にしたいのでどうすれば姉を怒らせることなく、そして私にとっても気分よく楽しい聞き方ができるのか、また、姉が怒ってもあとに引かない気持ちの持ち方を教えて欲しいのです。アドバイスをお願いします。(名古屋市/陽子)
回答
No.3回答
あなたがお姉さんのことをとても大事に思い、愚痴であっても快く聞いてあげたいと思っている、それなのに時に反発的になるご自分がイヤだ。気持ちをどう持てばもっとやさしい対応ができるのかがお知りになりことと、まず、拝察してよろしいですか?
もしそうなら、お姉さんのいいところ、やしてくれたことをこれまで以上に挙げて、自分は彼女には絶対やさしくしてあげるんだ、と言い聞かせてみてください。とは言うものの、実はこのような助言が役に立たないのはわかっています。あなたは何度もそうしようと思われ、でもその思いが役に立たないから、助言を求められたんですものね。
私なりの説明は、意志と感情を分けてみることです。つまり「やさしくしてあげたい」というのは意志で、「でも困る、多少は不快」というのは感情ですね。どちらも同じ感情(情緒)のレベルに置くから、引き裂かれちゃうような気がします。分けたとして、不幸なことに前者はよく後者を裏切る。
なぜなら意志より感情のほうにパワーのある場合が多い。理由を簡単に言えば、感情(情緒)のほうが、発達的には先に育つからです。赤ん坊はまず、快・不快から声をあげるでしょう?で、あなたの質問には、姉への負の感情のほうが見え隠れしているように思われます。
ならば強い主張のほうを丁寧に拾ってあげ、吟味してみることですね。姉への感謝は持ちつつも、けっこうご自分で思ったよりも姉が嫌いかも? イヤな感情はなるべく認めたくない、抑圧していたい。誰でもそうでしょうが、あまり自分を偽っていると、葛藤がつよくなったり、結果的にお姉さんにどのような気持ちを持たれているのかがわからなくなり、もっと困られるかもしれません。
でもやはり、大事にしたいとお思いなら、最初の答えに戻ってください。ご自分の気持ちをのぞいてみたら(正直な自分の気持ちってけっこう怖いものがあります)、やはり嫌い、困っていたとおっしゃるなら、適当に距離をとって,付き合われてはいかが?
それで、罪悪感をもつ必要はないと思いますね。一般的に言えば正直になられたほうが、人間らしいと私は思います。
回答者プロフィール
河野貴代美
アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。