お助け情報

お助けWANは、女性のこころと健康、仕事、法律の相談室です。このコーナーの担当者・回答者はいずれも、女性の心と健康、仕事など、暮らしに寄り添ってきた専門家です。どうぞ、安心してご相談ください。一人の悩みは、同じ悩みを抱える女性たちへとつながります。

法律

相談 22:夫は知的障がいがある子どもの存在を認めず暴力をふるいます。

2014.07.24 Thu

結婚して10年になります。40代主婦です。8歳の男の子が一人います。
夫は、結婚当初はカッとなると物を投げることはありましたが、おおむね優しい人でした。しかし、子どもが生まれてから、暴言、暴力がひどくなってきました。
子どもには知的障がいがあります。子育てに手がかかるので手伝ってほしいのですが、夫は、「俺の子ではない」などと言って、子どもを抱こうともしませんでした。子どもも、夫になついていません。
夫は仕事も長続きせず、私の婚姻前の貯蓄を取り崩して何とか家計のやりくりをしています。
子どもにとってはこんな父親でもいたほうがいいだろうと我慢してきましたが、精神的にも、経済的にも、限界です。離婚したいです。でも、子どもに障がいもあるので、悩んでもいます。
住んでいる家は私の名義なので、夫に出て行ってもらいたいのですが、怖くて話し合いができません。

回答

回答 22:打越さく良さん(弁護士)

さぞかし、大変な毎日ですね。ただでさえ、子育て中は諸々負担が大きいもの。それでも、パートナー同士支え合って子どもを大切に育てていけるなら、喜びも大きいですが、お子さんのことも邪険に扱っているのですね。それ自体、お子さんも傷ついていることでしょう。なついていない、というのも、無理はありません。
また、あなたに対しての暴力や暴言は、あなた自身の心身を傷つけるだけではなく、お子さんの心身にも大変な影響があります。DVが子どもに深刻な影響を与えることから、DVは子どもに対する虐待である旨、児童虐待防止法2条4号でも規定されています。
離婚するかどうかはあなたが決意することですが、「子どもにとってはこんな父親でもいたほうがいいだろう」というのは本当でしょうか。お子さんにとっても限界かもしれません。あなたもお子さんもよりハッピーに暮らせる方法を考えてみてください。
それが離婚となるとどうすればいいのか。暴力や暴言をふるってきた夫とは、別居や離婚に向けた協議など無理でしょう。まずは弁護士を代理人にたてて、代理人を介して協議、或いは家庭裁判所に調停を申し立ててはいかがでしょうか?
暴力の証拠がある場合(怪我の写真、診断書など)、地方裁判所に保護命令を申立て、あなたの近くを接近しないこと等を命令してもらうことができます。保護命令の一種として、一緒に暮らしているところから出て行ってもらう退去命令があります(DV防止法10条1項2号)。しかし、退去命令は2か月間の限定つきで、DVの被害者が引っ越しする準備の期間と言われています。国によっては、DVの加害者は今までの家を明け渡し、被害者が住み続けられるという保護命令もあるようですが、日本ではそうではありません。
代理人を介した交渉や調停でも夫が出て行ってくれなければ、不動産の明渡し請求訴訟をすることになるでしょう。夫が妻に明渡しを求める場合、夫に妻子を扶養する義務がある、或いは、当該不動産が実質的共有財産であるとして、請求を認めない裁判例があります(東京地方裁判所平成6年8月23日判決等)。
しかし、既に婚姻関係が破綻していて、その破綻原因が夫にあるというときに、妻の所有権に基づく不動産明渡し請求を認めた事例もあります(東京地裁平成3年3月6日判決・判タ778号55頁、東京地裁昭和61年12月11日判決・判時1253号80頁)。あなたの場合、認められる可能性はあると思いますが、法律相談に早々に行かれる等して代理人を見つけ、詳細をお話しになって、代理人と方針を検討したらよいと思います。
頑張ってください。
弁護士 打越さく良

回答者プロフィール

打越さく良

事務所は女性弁護士が5人。事務員さんも全員女性で、あたたかく笑いのたえないところに身をおいているので、過酷な事件にもめげずに立ち向かっている。離婚、DV事件、子どもの面会交流などを多数担当。また日弁連家事法制委員会,両性の平等委員会委員でもあり,家族法改正ロビイングにいそしむ。 著書に『改訂版Q&ADV事件の実務 法律相談から保護命令・離婚事件まで』(日本加除出版)

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