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回答16:小島妙子弁護士

2013.08.06 Tue

(回答)

 

使用者が労働者を解雇するには「客観的に合理的な理由」が必要であり,それがない解雇は解雇権の濫用として無効になります(労働契約法16条)。

 

あなたの場合,期間の定めがある労働契約ですので,使用者は「やむをえない事由」がある場合でなければ,契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇することはできません(労働契約法17条1項)。

「やむをえない事由」とは,期間の定めのない労働契約を解雇する場合に必要とされる「客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当と認められる場合」より厳格に解すべきです。契約期間は雇用するという約束で雇っているのですから,期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるをえないような特別の重大な事由が必要です。

 

あなたの場合,出勤停止と同じ理由を「書面で渡されて解雇された」とのことですが,労働基準法は,労働者が解雇理由に関する証明書を請求した場合は,使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないと定めていますので(労働基準法22条),解雇理由がはっきりしないのでないのであれば,さらに使用者に説明を求め,回答させることもできます。

 

解雇が無効となれば,解雇後の不就労期間の賃金(契約期間分の8ヶ月の賃金)を請求することができます。そのためには,解雇の効力を争う必要があります。復職の意思がなくても,当初から解雇の撤回を求め,就労の意思がある旨を内容証明郵便等の書面で通知しておきます。退職金の請求などをして,退職に同意しているなどと主張されないように注意が必要です。

 

なお,解雇後に労働者が離職票を受領したり,健康保険証を返却したり,解雇予告手当や退職金の振り込みを受けたことによって解雇を争う権利がなくなることはありません。解雇予告手当などが振り込まれてきた場合には,返還するか,または預かり保管し,以後発生する賃金の一部に充当する旨の内容証明郵便等で通知しておきましょう。

ちなみに,解雇の効力を争い,雇用関係が継続していると主張する場合には,仮給付の形で雇用保険を受け取ることができますので,雇用保険を利用するとよいでしょう(仮給付制度)。

 

解雇を争う方法ですが,都道府県労働局の個別労働紛争のあっせんは,相手が応じない場合,不調にて終了になります。一方,労働審判は,調停による解決ができない場合は,裁判官を交えた労働審判委員会が審判を出してくれます(労働審判法20条)。労働審判は3回以内の期日で調停も審判も行う手続であり(労働審判法15条2項),あなたが復職を求めず,金銭解決を求めるのであれば,労働審判で迅速に解決することができるでしょう。労働審判では,代理人弁護士がついた場合に,調停の成功率が高くなっていますので,弁護士をつけて労働審判の申立をすることをおすすめします。

カテゴリー:回答 / 小島妙子弁護士

タグ:くらし・生活 / no16 / 法律相談 / 小島妙子 / 使用者 / 労働者 / 解雇権の濫用 / 労働契約法 / 契約期間 / 社会通念上相当 / 期間満了 / 出勤停止 / 労働基準法 / 解雇理由 / 復職 / 内容証明郵便 / 退職金 / 離職票 / 解雇予告 / 雇用保険 / 仮給付制度 / 個別労働紛争 / 労働審判 / 労働審判委員会 / 労働審判法

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