オレオレ詐欺だの、巧みな勧誘だので、年寄りの小ガネがねらわれているといいます。だから、年寄りにおカネの管理をまかせてはいけない、気がつけば老後資金を株や投資ですっていたりする...と、言われますが、ほんとうでしょうか。
「カアチャン、心配だからオレが預かっておいてやるわ」と長男に言われて、預金通帳から実印まで全部渡したが、それでほんとうによかったのだろうか?という相談を受けたことがあります。わたしの答はこうでした...「それは、血のつながった実の息子によるオレオレ詐欺と言います」。
年金も資産も、管理を子どもに委ねてはいけない。資産は子どもをコントロールするための手段。最後まで自分の手で握っておかなくては...と思っていましたが、そう言い切ってよいか、不安に思っていました。
そこにとても腑に落ちる実例が。
野原すみれさんの「財産は最期まで自分名義に」(『死ぬまで元気に生きる自分流』老い支度の心得より『虹のたより』332号、高齢化社会をよくする虹の仲間)から、ご本人のお許しを得て引用させていただきます。
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財産は最期まで自分名義に 野原すみれ
「夫の死後、Jさんは、土地付き一戸建て住宅を同居の長男名義に変更した後に、息子が死亡。しばらくして、「この家は、私と子どもたちのものです。お姑さんはここにいらっしゃらなくても...」と嫁に言われたそうです。
Kさんが、「よく訪ねてきては背中を流し、『寝たきりになっても、僕がついているから』と言ってくれるやさしい子」であった自慢の息子は、母所有の不動産がすでに人手に渡っていることを知るや、まったく寄りつかなくなりました。
「退院しても、自力歩行は無理でしょう」との医師の説明に驚いたLさんは、これからは何もかも世話になるのだから、「貴女にみんなあげますから、よろしくね」と、預金通帳と印鑑を同居の嫁に。奇跡的に回復し、歩けるようになった彼女は、「冥土のみやげに」と旅を思い立ち、お嫁さんにツアーの手続きを頼んだところ、「お金はどうするんですか」と言われ、絶句したとのことです。
この3例とも、不幸の原因はお金なのです。
Jさんは、名義を自分にしておけば立場は逆転しました。Kさんの息子は、母親所有の不動産が目当てだっただけ。Lさんは、預貯金をお嫁さんにあげずに、「ツアーに一緒に行ってね。費用のほかに日当もたっぷり払いますよ」と頼めば、嫁は姑孝行ができてお金ももらえると、喜んで同行を承諾したはずです。
「うちの家族に限って」の信頼も大事ですが、「自分の財産は最期まで自分名義」にしておき、そのつど、感謝の気持ちを形に表すのはいかがでしょうか。
お互いに対等でハッピーに過ごせますよ。」
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そう言えば、大阪の開業医、辻川覚志さんも『老後はひとり暮らしが幸せ』(水曜社、2013年)のなかで、「できるだけ最後まで金銭管理を自分でするほうが能力維持にも有効」と言っておられます。
おカネの管理は自立の基本。その方がボケ防止にもよさそうです。
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