
「面会交流について#2 ―――実態知らない学者の暴論
著:イダヒロユキ」からの続き
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●私のスタンス
私の「親子断絶防止法」へのスタンスはこれまでいろいろのベてきたところであるが、大森氏に私の反論の背景にどういう考えがあるのかを分かっていただこうと思うので、ここに再度まとめておきたい。
前提としてシングル単位論の理解が必要で、そこが分かっていない人も多いが、その話は長くなるので省く。
まず私は北欧の実態を踏まえて、フェミニストでありかつ、共同親権論者である。
面会交流についても、私は加害者プログラムの中で、真摯にDVを反省し、子供に会って償っていこう、愛情を正しく示していこうと思う加害者がいる現実を知っているので、面会交流をすすめることには一定の意味があるとは思っている。
しかし、親子断絶防止法には問題が多く今このままの導入にはマイナスが多すぎる、と思っている。DV被害者支援の側の懸念を払しょくするような担保をつけて、まともな法律にしないといけない。
「フェミニズム嫌い」的な思想の人たちがイデオロギー的に戦いの場として、面会交流や共同親権を悪用することには反対。またこの法案を、十分な議論を踏まえずに強行採決することにも絶対に反対。
「DV被害を受けて子供を連れて家から逃げる女性を妨害する側面があること」には絶対に反対。
DV夫から子どもと女性が逃げることは、「拉致、連れ去り、誘拐」ではない。
この法律が成立すると被害者が逃げ出そうとしたとき子どもを置いて逃げるしかなくなってしまう可能性がある。 「それなら逃げない」と判断する母親も多くなる.だろう。それはDV被害者に被害を甘んじて受け続けろというように働く。
つまり、反省していないDV加害者に有利な法律になる側面が強い。
この法律案の、離婚を抑制しようとしている面には反対。 実態が破たんしているなら、シングル単位で離婚は決定できるようにすべき(破たん主義)。
離婚がよくない、単親家庭が子供によくないというのも有害な偏見 。
「子どもの立場、人権」を考えるからこそ、DV環境から離すことが大事。
加害者父親が子ども を連れて逃げるというようなケースは少ないので、この法律を急いで通す必要はない。
私は、北欧社会がそうであるように、人権感覚がすすみ男女平等がすすみシングル単位的に考えれば共同親権を導入すべきと考える。
暴力的でない「普通のまともな親」なら離婚後も当然子供を愛し続け、養育の責任を負うべきだから。 子どもにとってもどちらの親からも愛され、どちらの親とも会える/暮らせる権利が保障されるべきだから。
DV加害者の場合、DV 加害者が真摯に反省して、償う行動の一部として、子供に会って謝罪し、子供の心に愛情を与えていくのはあるべき姿。
しかしそんなことをちゃんと実践できる親は、日本では現状、少数だろう。
DVを反省せずに相手が悪いと思っていて、敵対的になっているような加害者が、面会交流や共同親権を得たら、子供や被害者にマイナスの影響が及ぶ。
この法律によって、養育費が安くなるとか、なんでも相手(父親)に許可をもらわないといけなくなるとか、加害者が被害者を邪魔するような面、嫌がらせしやすくなる面が増大するとすれば問題。
子どもの自己決定の自由が制限される面もある。 「会わせないと罰則」というようなのはもってのほか 。 新法が「嫌がらせ、さらなるDV、敵対のための手段」になってはダメ。
養育費を支払っていない親は約8割といわれており、これがおかしい。 親子断絶防止法の議論の前に、まずは北欧のようにパーソナルナンバーで夫の居場所や収入を補足して絶対に養育費を払わせる仕組みにすること(国による養育費建て替え制度の確立)
私は、一般的に離婚をなくすことはできないと思うので、離婚後も親が憎みあわず、仲良く交流し、拡大家族になるのが理想の方向と思う(西欧では一定その実践が進んでいる)。私が共同親権を言うのはむしろ、皆がそのように、離婚してもまともな親として子どもにかかわるのが当然だから。
しかしそれは理想の方向で、北欧や西欧の一部ではだいぶ進んでいるが、日本では現状はそれができない親が多い。
面会交流には、養育費の支払いと(DV加害歴がある場合は)加害者プログラム参加を前提とすべき。
そして子供の意思を優先して尊重すること(子供が自己決定力を持てる一定年齢になれば、子供に会う/会わないことを決める権利がある) 面会において第3者の監視があること、(面会交流支援団体の利用)も大事。
相手の親を悪く言わない等「面会交流のルールを守れる」ようにすべき(=離婚カップルへの離婚後の関係の在り方の教育の義務づけ)だし、親になる人には全員 「まともな親になる教育プログラムの受講義務化」もいるだろう。
そういうことが整備されない中では、面会交流の強制性の強化も共同親権も現実的にはまずい結果をもたらすだろう。
だがこうした具体策までまだわかっていない人が多く、その必要性の認識が広がっていない。たとえば、2017年9月21日の『朝日新聞』の伊丹事件を扱った記事(「元夫と4歳の娘、面会交流初日に無理心中 謝り続けた母」 石田貴子記者)でも、問題点の指摘はあるが、加害者プログラム参加と養育費の支払いを面会交流の前提条件にするというような対応策への言及がない点で、画龍点晴を欠く記事と感じた。
●大森氏のスタンを問うたが答えはなし
私が大森氏を批判したことに大森氏が「不愉快だ、侮蔑的表現だ、訂正/削除しろ」というので、私の批判の妥当性を考えたいと思い、大森氏のスタンスを問うたがそれへの答えもなかった。
大森氏がジェンダー平等に対するバックラッシュ派のスタンスで確信犯的に反フェミニズムとしてああいった親子断絶防止法制定すべきという意見を述べているのか、単に現実を知らないで一般論で得意げにあのような一面的な論を書いたのかを知りたいと思った。大森氏の意見の背景にはどのような思想やスタンスがあるのかとまず考えたい(知りたい)と思った。
それで彼からコメントが届いたことに対して、1回目と2回目に以下のように問うた。
「そもそも、大森氏のことを存じ上げないのですが、親子断絶防止法については推進の立場なのでしょうか?これまでDVや面会交流についてどのようなことを書かれたり研究されたりして来られたのでしょうか。
親子断絶防止法については多くの人がいろいろ批判的な指摘をしていますが、(とりあえず)私が書いた、親子断絶防止法案の危険性についてはどのようなご意見なのか、そこが大事ですので、そこへのご意見を教えてください。
また加害者プログラムについてはどのようなご意見でしょうか。
またフェミニズム/ジェンダー学/ジェンダーフリーに対してはどの様に思っておられますか。
DV防止法についてはどの様なご意見ですか。どのように改正すべきと思っておられますか。
私は拙著でDV防止法とストーカー法を根本的に変えていくべきだと書いています(拙著「デートDV・ストーカー対策のネクストステージ」)。
また慰安婦問題についてはどの様なお立場ですか?
それへのお答えによっては真摯にお話ができるかと思います。」
「私の批判の投稿の根底には、「大森氏のような主張をするのは『DVの実態、それに伴う離婚/離別をめぐっての諸問題(ストーカー、殺人事件など)』をわかっていないのではないのか」という思いがありました。でもそうではないかもしれないのでお聞きします。DVをめぐる諸問題のことはよくわかっておられるのでしょうか。DV被害者の苦しい実態――養育費さえ受けとっていない人が多い、いつまでも攻撃される、DV被害の後遺症に苦しむ、子どもへ悪影響で苦しむ、経済的な困難に陥っている等々―ーーについてご存知なのでしょうか。
あまりDVのことはよく知らないし専門でもないが、憲法を研究する一学者として、共同親権にすべきなのに反対する人がいておかしいなあと思った程度で、世間の人を啓発したいと思って人権擁護の立場であの意見を書かれたのでしょうか?
もしDVのことをよく知らないまま、この複雑で現実的には深刻な問題に「手を出してしまった」という程度なら、やめていただきたいと思います。世間をなめていると思います。
ジェンダーフリー攻撃の時にひどいことを言い続けた読売新聞や産経新聞はこの間、安倍政権へのスタンスでも、いろいろと問題になっていますが、そういう「保守/右派系」の言説を好む人々の中には、DV被害者の実態をよく知りもしないで、「子供を連れさるのは誘拐と同じだ」「共同親権にすべきだ」などと言っているので、そういう言説に意図せず加担してしまっている程度なら、もう口を出さないでいただきたいです。
私が「実態を知らない馬鹿な学者」というのは、実態を知らないで机上の空論での人権論をいうような人のことを指しています。そして大森氏の意見も、この深刻な問題に対してあまりに一面的なので、「実態を知らないのだろう」と思ってきつい表現で批判しました。私が「馬鹿」というのは「受験偏差値的に賢い」かどうか(知識があるとか頭の回転が早いとか)の基準での「偏差値が低い」という意味ではもちろんありません。とても頭がよくて賢くても、DVの事態を知らないであんな危険な意見を言ったとしたらそれは馬鹿な学者の典型だと批判したのです。
あなたから反駁があったので、この批判が当たっているかどうかを判断するために私は応答しているのです。
実態のことを知らないなら、ちゃんと被害者の苦しい実態などを勉強して正しい意見を言ってほしいと思っています。
そうではなく、実態のこともよく知ったうえであの意見を書いた、確信犯的に「親子断絶防止法を通すべきと思っている」「フェミニズムは間違っていると思う」というなら、そう言う人だと思って対応させていただきます。」
「大森氏は憲法学者ということですので、人権派なのかもしれないですね。ですからまずそこを教えてください。
何を「人権派」「リベラル」というのかももちろん幅広い理解があるでしょうが、でも現実的にはおおむねわかりますよね。人権派の憲法学者なら、私との共通土俵のうえでの話し合いができるかと思います。大森氏が人権を大事にすべきと思って、その一例としてDVや両親の親権や面会交流について真剣に研究されてのご意見を述べておられるなら、結論は違っても真摯に話し合いができると思います。「馬鹿な学者」というようなレッテル貼りで相手を攻撃することが目的ではないので。
人権派といってもセックスワークや労働運動についての様々な立場があるように、人権派のスタンスとしても、離婚や面会交流や加害者プログラム等についても意見の相違があるのは当然と思っています。
共同親権とか面会交流について主張する人の中には、実は「人権派、リベラル、サヨク等が嫌い」、「フェミニストが嫌い」「なんでもDVといって家族を破壊するフェミニストが嫌い」「ジェンダーフリー等といって伝統的な性役割分担を批判して文化を壊すやつらが嫌い」「DVなんていうが金をとるためのでっち上げがほとんどだ」「夫婦のことに外部が口出しするな」「女のやっていることのほうがひどい」という人々もいるので、大森氏がそれと近いのかどうか、どういう立場でああいったネトウヨなどが好む主張をされたかを聞いているのです。
その意味で、大森氏は、まず人権派の立場に立っておられるのかどうか教えてください。」
これに対して大森氏から「従軍慰安婦やフェミニズム一般について議論は記事と関係ないと思います。」という答えがあった。
それに対しては
「今までに述べたように、親子断絶防止法を促進しようとする人々の中には、ネトウヨ的な人や反フェミニズムの人、慰安婦問題で非常に問題ある態度をとっている人もいるので、大森氏のスタンスを聞いているのです。関係あることなのです。
これまでの返答を含めて、以上がお答えですから、事実関係での私の誤解などは認めたとおりですが、現時点ではあなたがお求めになるような点での訂正も削除もする必要はないと思っています。
そういうことにこだわられて、大事な問題に何もおこたえにならないのはどういうことでしょうか。今後も、伊丹事件が面会交流のリスクを示すものでなく、「親子断絶の問題を告発した事件」で、親子断絶防止法を成立させるべきということを主張されるのですか。それともそれは言いすぎたと認識して、ご主張を変更されるのでしょうか。そこが大事なのでお答えください。
せっかく交流できたので、貴方は私がどういう思いで批判意見を書いたかを一定理解されたかと思うのです。しかし、私はあなたがどういう思いであれを書いたかが分からないままです。最終的に意見が違うにせよ、一定、お互いが真剣にこの問題に向き合っているということを確認したいと思っています。大森氏がああいった主張をされる背景、およびこの問題に臨まれる個人的動機をお聞かせください。」
と答えておいた。
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最後に、大森氏には、こうした問題に口を出すなら、ネットでみられる親子断絶防止法にかかわる問題点の指摘―――たとえば千田有紀(武蔵大学教授)の一連のネット記事
「また起こってしまった伊丹市の面会交流殺人事件――離婚直後の面会交流のリスク」(2017年 4/24)https://news.yahoo.co.jp/byline/sendayuki/20170424-00070247/
など―――にどう思うのかを問うたが、それにも回答はなかった。
以上
「面会交流について#1 ―――実態知らない学者の暴論 著:イダヒロユキ」はこちらから
↓ ↓ ↓
https://wan.or.jp/article/show/7484
「面会交流について#2 ―――実態知らない学者の暴論 著:イダヒロユキ」はこちらから
↓ ↓ ↓
https://wan.or.jp/article/show/7485
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