「11.11ブックトーク」のタイトルは「孫世代が出会う『銃後の女たち』」ですが、登壇者のお一人である「元SEALDs」の福田和香子さんは、わたしから見ると正真正銘の「孫世代(わたしに孫はいませんが)」です。ネットを検索すると彼女への共感の声ももちろんありますが、それよりも「カラスの鳴かぬ日はあっても福田和香子が誹謗中傷されない日はない」ほどのすさまじさは目を覆いたいくらい。

 でも、福田さんは負けません。もちろん応援団もいて、上野千鶴子さんによる彼女をはじめ元SEALDsのメンバーとの対話(『atプラス』2016年7月刊)や藤原新也さんとの対談(『SWITCH』Vol.34 No.2)なども公開されていますが、そこでも「歯に衣着せぬ」物言いぶりが頼もしい。
 その舌鋒は誹謗中傷するやからに向かうだけではなく、時には運動する側の内部にも向かいます。上野さんが「運動のなかでも『女の子には女の子の指定席』があるのではないか?」と聞いたら、福田さんは言下に「あ、めっちゃある」と答えました。
 わたしも60年安保の後、産休明けに職場の組合で委員長をやるといったら「それは無理」といさめられ、「男性は子どもが出来ても委員長をやるのに、なぜ女にはできないの?」と立候補したことがありますが、そのころとあまり変わらないのではないか…。
 その福田さんが誹謗中傷されてもジェンダー差別を感じてもへこたれず、「実際に女性たちが社会的に弱い立場にいることを知って、私はこれからの世代の女の子たちに『黙らなくていいよ』って伝えたいです」と言い切る強さは何処から来ているか?

 一つのエピソードが伝えられています。
 彼女が中学生の時、式典で「君が代」を歌わなかったため処分を受けた女教師根津公子先生が毎朝校門の前に立ち、歌わない理由を訴えていたとき、生徒たちの大半は薄笑いをして通り過ぎて行った、福田さんもその時は周りを気にして何も言えなかった、というのです。大学生になって秘密保護法案が出て来たとき、あの時何も言わなかった自分を思い出し、「黙っていてはいけない」と決心したのだそうです。
 屈託なく挑発的とも見えることばを吐くときもある福田さんの、心に深く刻まれている他者への共感やいたみの共有の精神こそ「もう、女は黙んない」というメッセージの原点なのだと気がつきました。(アジア女性資料センター『女たちの21世紀』84号 2015年12月刊 「福田和香子特別インタビュー」 より)
 戦時中「黙らされ」、「戦意高揚」しか語ることが出来なかった女たちのいたみを、孫世代(ひまご世代?)の福田さんはどう読み解くでしょうか。11月11日にその扉が開かれることを期待しています。
 *11月11日、上智大学にて福田和香子さんも登場するブックトークが開催されます。詳しくはこちらから