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仮設の映画館 http://www.temporary-cinema.jp/

新型コロナウイルス感染症の影響による「緊急事態宣言」が全国に拡大され、事業主への十分な補償のない自粛要請が続く中で、映画という文化をめぐる状況も、とても厳しくなっています。特に、全国にある小規模映画館(ミニシアター)が存続の危機にさらされていることについては、『プリズン・サークル』の紹介記事(4/2付)の中でもお知らせをしました。

その後、4月13日(月)から「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」というクラウドファンディングがスタートしたり、「SAVE the CINEMA」という、ミニシアター・エイド基金と連携した、署名活動と国への政策提言を進める動きも現れました。著名な映画監督や俳優、映画関係者の方たちが多数「呼びかけ人」となっているので、大きく報道され、皆さまもすでにご存じかも知れません(初耳!という方はぜひリンク先のサイトを訪ねていただき、ご賛同やご支援をお願いできれば嬉しいです)。

それ以外にも全国各地で、大小さまざまな支援の動きがある中、4月25日(土)から「仮設の映画館」という試みがスタートしました。これは、全国の映画館と配給会社、製作者、映画ファンをつなぐために、新作映画を有料でデジタル配信し、鑑賞料金をそれぞれに(映画館にも!)分配するというものです。新作のドキュメンタリー映画『精神0』の公開を控えた想田和弘監督と、配給会社東風のスタッフの発案によるものだとのこと。WANでも、これまでに『プリズン・サークル』『さよならテレビ』『恋とボルバキア』『物語る私たち』『ペコロスの母に会いに行く』など、東風から配給された作品は数多くご紹介してきたところです。

この仕組みが面白いのは、観客がインターネット上で「どの映画館で鑑賞するか(つまり、どの映画館を応援するのか)」を選択できるところ。応援は、全国のどこにいても可能で、どの映画館を応援するかも自由です。さらに、映画を見るときにはあまり意識されない配給会社の存在も、映画の多様性を守るためには欠かせませんが、その存在がクローズアップされているのも「仮設映画館」の大きな特徴だと思います(配給会社をめぐる状況に関しては、一例としてミモザフィルムズのnoteの記事もご参照ください。「【映画配給会社 ミモザフィルムズ】Blu-ray・DVD&動画配信作品まとめました」の中で紹介されている作品にも、WANで紹介をしてきた作品が多数あります)。この機会に、ご自宅で映画を楽しみながら、映画の未来を応援してみませんか?

<「仮設の映画館」の作品について>

「仮設の映画館」の現在のラインアップは10作品。その中でも、わたしのイチオシは現在公開中の『春を告げる町』と、5月2日(土)以降に配信される『精神0』、『タレンタイム~優しい歌』、『プリズン・サークル』など。未見の作品もたくさんあるので、時間を見つけて順番に拝見するのを楽しみにしています。

島田隆一監督の『春を告げる町』(配給:東風)は、東日本大震災で全町避難を余儀なくされた、福島県双葉郡広野町の人々の「今」に近づこうとするドキュメンタリーです。「復興」とは、どういう状態を言うのか。誰にも答えの出せない問いを、復興を強いられてきた人たちの日常から考え続けていこうとする姿勢が、美しい映像や輪郭のある音、豊かで厚みのある音楽といった映画の隅々にまで感じられる、とても丁寧に作られた作品です。被災体験をモチーフに演劇をつくる高校生たちの姿には、見ていて胸が熱くなりました。コロナ禍にあるわたしたちも、確実に<アフターコロナ>を生きることになる。わたしは、まだ収束の目処が立たないのにと思いつつも、そのことも意識しながら見てしまいました。とにかく音が素晴らしいので映画館で見るべき作品ですが、ぜひ、今は「仮設の映画館」で!


想田和弘監督の『精神0』(配給:東風)は、2008年の作品『精神』の主人公の一人である、精神科医の山本昌知氏の、引退後の暮らしを追ったドキュメンタリー映画です。本作では、彼と共に歳を重ねた、いまは認知症を患う妻との二人暮らしを見つめています。わたしも未見の作品ですが、これまで想田監督の作品には裏切られたことがないので、今回も期待大。個人的には、想田作品にはいつもネコが登場するので今回はどんなネコが・・・?というひそかな期待もあります。


ヤスミン・アフマド監督作品『タレンタイム~優しい歌』(配給:ムヴィオラ)は、マレーシアという国の持つ多様さに厳然として存在する、民族や言語、宗教といった「分断」を無視するかのように、軽やかに多様性を謳う作品。以前、WANで彼女の監督2作目となる『細い目』を紹介していますので、そちらの記事もご参照ください。涙腺崩壊必至!ご覧になるときはタオルを忘れずに。


坂上香監督の『プリズン・サークル』(配給:東風)は、既にWANで紹介させていただきました。見ると必ず、誰かと感想をシェアしたくなる作品です。知人・友人と一緒に(それぞれオンラインで)見て、Zoomなどのオンラインでシェア会をするのもオススメです。


オススメ最後は、佐々木育野監督の『どこへ出しても恥かしい人』(配給:シマフィルム)。歌手・画家・詩人・競馬愛好家(?)・・・と、多才な活動を続けるアーティスト、友川カズキのドキュメンタリー映画です。1950年・秋田県の生まれで、1974年にレコードデビュー。中上健次や大島渚など多数の芸術家、文化人を魅了した彼を被写体に、1980年生まれの佐々木監督が彼に圧倒され、自身も途方に暮れながらカメラを回すさまが想像できる、かなり異色の作品です。見た後で、むやみに元気になること請け合いです!(中村奈津子)