モイ!(Moi! こんにちは!)
森屋淳子です.
フィンランドもすっかり夏らしくなり,23時すぎてもまだ明るい日が続いています.
6/19-21にはユハンヌス(夏至祭)という夏の到来を祝うお祭りがありました.
今年は新型コロナの影響でユハンヌスのイベントは中止,乾燥注意報のため,コッコ(かがり火)を焚くのも中止となりました.
それでもフィンランドの新型コロナの感染状況は落ち着きつつあり,新たな死亡者数も集中治療中の患者数もゼロとなりました(7/2執筆時).
また,レストランや美術館・博物館などもソーシャルディスタンスや手指消毒には十分に注意しつつ徐々に再開され,
以前に比べると街中でも多くの人を見かけるようになりました.
フィンランドの小学校やプレスクールは6月あたまから8月中旬まで約2ヶ月半もの間,夏休みとなります.
共働き家庭が約8割であるフィンランド.大人も連続3~4週間の夏休みを取るのが一般的ですが,
子どもの休み期間中のすべてをカバーできるわけではありません.
*夏休み中の子どもの保育はどうする?
「長い長い夏休み,小さな子どもの面倒は誰がみるのだろう?」と思っていましたが,
・両親が交代で休暇を取る
・祖父母にベビーシッターをお願いする
・デイケア,学童保育を利用する
・デイキャンプに参加する
・社内保育を利用する(夏休み期間中,子ども同伴出勤できる会社もあるようです)
などで対応しているようです.
我が家の長男(10歳)は民間のテニススクールが開催したテニスのデイキャンプに参加しました.
そこですごいなぁ~と感心したことがあります.
それは,デイキャンプ自体は月~金の9~15時だったのですが,
その前後の8~9時,15~17時も保育の必要があれば,追加料金なく,遊び場を提供してくれることです.
昼食もスクール内で作ったものを提供してくれるため,各家庭で昼食を用意する必要がなく,
共働き家庭にやさしいプログラムだと感じました.
もう一つ,とても感動したフィンランドの子育て支援サービスがあります.
それは,「無料の昼食サービス」です.
フィンランドでは夏休み期間中,複数のレイッキプイストで,子どものための昼食が無償かつ予約不要で提供されます.
レイッキプイストとは,基本的には市の職員が日中常駐している公園で,
室内遊び場やトイレなどがある屋内施設も併設されている児童館みたいな場所で,
学童保育や子どものいる市民の交流の場も兼ねています.
そのレイッキプイストで,平日12時に毎日日替わりの昼食が提供され,
16歳以下の子どもであれば誰でももらうことができます.
私達は次男(6歳)のお友達親子に誘われて初体験しましたが,
この昼食サービスは,なんと戦時中の1942年より開始された伝統的な催しとのこと.
子供たちが,親が仕事で留守の間,昼の食事に不自由しないように,
また,夏休み中の親の昼食づくりの負担軽減のために,現在でも続いているとのことでした.
(一時期,財政難のため,このサービスを廃止しようという提案も出たけれど,さまざまな企業が寄付を申し出たりして,結局,中止せず継続することになったとのこと.この昼食サービスは,フィンランド人にとって誇りでもあるようです.)
実はフィンランドは,世界で初めて給食が無償化された国です.
1900年頃より一部の自治体での給食の無償化が開始されていたそうですが,
自治体すべての児童生徒に無料の学校給食を提供する法律が1943年に施行され,
5年の移行期間を経て,給食の無償化が全国規模になったとのことでした.
フィンランド政府が発行している冊子“School Meals for All”(ダウンロード可能)にも,
School feeding is seen as an essential part of a child’s well-being and growth, and a balanced school meal is more, than just nutrition: it sustains the ability to study, it gives pleasure and renewed energy, and increases the students’ awareness and knowledge of food and nutrition. As a joint responsibility of the national institutions and local education providers, school feeding is a shared investment in both learning and the future of the country.
-学校給食は子どもの幸福と成長に欠かせないものと考えられており,バランスのとれた学校給食は単なる栄養補給ではなく,学習能力を維持し,喜びと新たなエネルギーを与え,生徒の食と栄養に対する意識と知識を高めるものである.
国の機関と地域の教育提供者の共同責任として,学校給食は学習と国の将来への共同投資である.
と書かれてあります.
そういった給食に対する理念が,夏休み期間中の無料の昼食サービスに通じているのですね.
新型コロナの影響で学校が遠隔授業となったときも,対面授業の再開より前に,給食提供が再開され,
学校給食をとても大切にしていることが感じられました.
前回の記事にも「保育園で朝食を食べさせてくれる」と書きましたが,
子どもの虐待を防止しつつ,両親の支援も行う合理的な制度設計や,たとえ税金が高くても,
「未来の社会を担う子どもたちのために使われているんだ」と実感できる仕組みが素敵です.
また,「サービスそのもの」も素晴らしいのですが,それだけでなく「そのサービスに込められた思い」が感じ取れて,
心がホカホカと温かくなります.
日本でも「子ども食堂」の活動が広がりつつありますよね.
子どもの貧困,孤食の問題の対策を考える上で,「社会全体で子どもを育てる」を大切にしているフィンランドの例が参考になると嬉しいです.
モイモイ!(Moi Moi! さようなら)
・・・
「フィンランドで見たジェンダー意識と子育て支援」バックナンバー
第1回(2020/2/10):“34歳女性首相”が誕生する社会
第2回(2020/3/10):休むことはお互い様
第3回(2020/4/10):フィンランドの新型コロナ対策
第4回(2020/5/10):フィンランドの遠隔授業に思うこと
第5回(2020/6/10):フィンランドの子育て支援制度と課題