モイ!(Moi!こんにちは!)
森屋淳子です.


 8月25日より我が家の子ども達も,フィンランドから帰国後はじめて日本の小学校に通い始めました.
フィンランドでは6月1日から夏休みだったため,今年はなんと!3か月近くも夏休みだったことになります.
長男(小4)は日本のお友達との1年ぶりの再会,次男(小1)は初めてのランドセル登校+学童生活の開始.荷物が多くて&重くて大変そうですが,毎日元気に通っています.
(ちなみに,フィンランドでは全て学校で用意してくれたため,自宅からの持ちものはほとんどなく,子どもも親も随分ラクでした)

 さて,前回の記事では,次男が木から転落して右肘を骨折し,緊急手術・入院したときの体験談を書きました.
「ケガや病気で落ち込んでいる子ども達が,少しでも楽しめるように」という仕掛けをいくつかご紹介しましたが,ご紹介しきれなかったものもあります.
そのため,今回はフィンランドの医療体験(外来編)として,次男がお世話になったヘルシンキ市 New Children's Hospitalの「子ども達が楽しい気持ちになる仕掛け」について追加でご紹介します.

 子どもが自分のアバターを選べました.

 骨折後の日帰り入院より退院した日の約1週間後に,経過観察のための外来がありました.
指定された時間に病院に行くと,外来受付用の機械があり,受付を行います.
前回も紹介しましたが,フィンランドでは全てのカルテ情報が,社会保障番号(≒マイナンバー)に紐づけされており,「各病院ごとの診察券」はありません.

なんだかとってもオシャレな受付.スペースがゆったりとしています

受付用の機械にKelaカード(≒健康保険証)か住民登録カード(≒マイナンバーカード)をかざすと,本日の予約内容が表示されます



1)1階でレントゲン検査を受け,2)2階の外来受診という予定.次男は犬のアバターを選びました



 素敵だな~と思ったのは,子どもが自分で自分用のアバターを選べる仕組み.
ランダムに6つ程のアバターが提示され,自分の好きなアバターを選ぶと,そのアバターと受付番号が載った紙が出てきます.

順番待ちの状況がアバターで分かります.

レントゲン室の受付にこの紙をかざすと,待合室のディスプレイに次男の選んだアバターが表示されました.



犬の次はテントウムシ…ということで,子どもでも自分の順番が分かります



待ち時間も楽しめる工夫が随所にありました

待合室も可愛いデザインに溢れていました.病院とは思えない温かみがあり,「待ち時間も楽しめるように」という配慮を感じました.

1階のレントゲン室横の待合スペース

2階の外来待合室の横にあるカフェテリア




各階ごとにテーマが決められており,2階はジャングルがテーマ.実は見た目だけでなく,音にもこだわりがあり,各階でそれぞれのテーマに合った音が流れているようです.
また,とりわけ目を引いたのが,1階にあった巨大な「バーチャル水族館」.

アアルト大学の学生さんが作られたそう

https://www.aalto.fi/en/news/comforting-hospital-walls?fbclid=IwAR3psutdMDqm__DQlNvHMWAarS3fhbb0pQNRmf2Nc2pJz8C7S7kQCBZ47ew

奥には,リアルな熱帯魚の水槽もあります.椅子もオシャレ!

きれいな熱帯魚に大興奮の次男…



 色んな仕掛けのおかげで,「病院に診察にきた」というより「テーマパークに遊びにきた」ような感じでした.
「ネガティブになりがちな病院で,ポジティブな体験を提供する」ってやっぱり素敵です.

今回は,なんだか病院内の紹介ツアーのようになってしまいましたが,前回もご紹介しました病院内バーチャルツアーに再度ご案内します。
こちらから,参加できます.英語ページもあります。

最後にもう一つ.

「危ない!」ではなく「安全な使い方」を教える

 外来を担当してくれた先生(今回は男性でした)が木登りから落ちて右肘を骨折した次男に向かって言った,「これからも木登りを止めないでね」という言葉が印象的でした.
私たちが住む東京の公園からはどんどん「危険な遊具」が撤去されています.
一方,フィンランドでは「危ないから避ける」ではなく「安全な使い方」を教えます.
公園にも倒木や岩がたくさんむき出しになっていますが,避けずに自然の中で安全と危険を学びます.
森にたくさん生えているキノコも,どれが食用キノコでどれが毒キノコか,小さいうちから自然の中で学びます.
また,未就学児が,針と糸を使って裁縫し,自分のペンケースを作っていてビックリしました.針も「危ないから」と避けるのでなく,「安全に使う方法」を少人数に分かれて大切に教えてもらいます.こういったところにも「子どもを子ども扱いしない」姿勢が徹底されていると感じます.
「危ないからダメ!」ではなく「どうやったら安全に使えるか」を一緒に考える.
フィンランドの「子ども主体の医療・教育」は是非とも見習っていきたいです.


モイモイ!(Moi moi! さようなら!)

公園で採った木の実を,針と糸を使ってつなげている子ども達@プレスクール



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「フィンランドで見たジェンダー意識と子育て支援」バックナンバー

第1回(2020/2/10): “34歳女性首相”が誕生する社会

第2回(2020/3/10): 休むことはお互い様

第3回(2020/4/10): フィンランドの新型コロナ対策

第4回(2020/5/10): フィンランドの遠隔授業に思うこと

第5回(2020/6/10): フィンランドの子育て支援制度と課題

第6回 (2020/7/10) :  夏休み中の伝統!公園での無料昼食サービス

第7回(2020/8/10): フィンランドの医療体験(緊急手術・入院編)