健康
相談21:遠方に住む母が、2年ほど前から認知症の疑いがあります
2018.08.22 Wed
遠方に住む母が、2年ほど前から認知症の疑いがあります。一緒に暮らしている家族が一度病院へ行くよう、折をみては勧めてきたのですが、本人は昔から医者嫌いで全く動こうとしません。まだパート勤めをしており、年に一度の健康診断は受けていますが、それ以外ではよほどのことがない限りは、病院に足を向けない状況です。
最近、もの忘れの度合いが激しくなり、感情の起伏も以前より気になり始めたため、無理にでも連れて行こうと予約を入れたところ、当日に抵抗され、大喧嘩となってしまい、結局病院へ行けず仕舞いでした。これでは、ケアを頼もうにも頼めず、家族でどう対応したら良いかも分からず不安です。
こんなとき、どこに相談に行ったらいいのでしょうか。何かアドバイスをいただければ助かります。
(岐阜県、40代)
回答
回答21:内田宏美さん(医学部看護学科教授)
認知症の疑いがあるけれども自覚のない方に、受診していただくほど難しいことはなく、ご苦労お察しいたします。進行を押さえたり、興奮などの二次的症状をコントロールしたり、生活を支援するための社会資源を活用したりするためには、認知症であるという医師の診断が不可欠です。また、脳神経系の他の病気や、うつなどの精神疾患との識別をして、適切な医療を受けるためにも、受診は必要不可欠となります。
受診のためによく使われる手は、身体の病気、例えば高血圧などの持病で通院している「かかりつけ医」に相談して、体の病気と一緒に認知機能を診てもらい、必要があれば、専門家を紹介してもらうと方法です。ただ、ご相談のケースでは、ご本人は医者嫌いで「かかりつけ医」はおられないようですし、既に受診を巡って揉めておられるので、ご家族だけで直接医療にアクセスするのは厳しいと思われます。
自力で受診できない場合に、そもそも「どうやって受診に持っていけばよいか」という具体的な相談に乗ってもらえる身近な場としては、自治体ごとに設置されている「地域包括支援センター」や、「保健所」又は「市町村の健康福祉課」の“高齢者相談”窓口があります。
ここで、保健師やケアマネージャー等の専門家に相談されれば、個々のケースの状況に応じて、最も適切な方策を一緒に考えてくれるはずです。必要に応じて「もの忘れ外来」などの専門診療を受けることのできる病院の情報提供や、本人の受診に先立って、家族で事前に受診相談できる病院の紹介など、居住されている地域で活用できる医療資源と、そこへのアクセスの方法について助言してもらえると思います。また、受診をどうやって切り出すか、受診に向けて当人にどのような態度で接していけばよいかなど、様々なケースを通して蓄積された「知恵」に基づく、具体的な助言ももらえるのではないかと思います。
「地域包括支援センター」や「保健所」「市町村の健康福祉課」では、認知症と診断された後、当人やその家族が地域の中でより良く暮らしていくために、活用できる制度や様々な社会資源についても、継続して情報提供や相談に乗ってくれるところです。公的機関ですから、大いに利用されると良いです。
その他、「認知症の人と家族の会」(http://www.alzheimer.or.jp/)等、独自に相談に乗っている非営利組織も数多くあるようですので、活用してみてください。
回答者プロフィール
内田 宏美
1976年京都大学医学部附属看護学校卒業。手術室、循環器内科、放射線科、消化器外科など、大学病院で臨床経験を積んだ後、医療技術短期大学部専任教員となる。2000年の京大病院エタノール事故の後、初代の総括リスクマネージャーとして医療安全システムの整備に携わる。その後、鳥取大学保健学科を経て、2005年より現職。専門は看護管理、医療安全、医療倫理など。