加納実紀代さん 昨夏箱根の別荘にて
悲しいお知らせです。
加納実紀代さん(女性史家、元敬和学園大学特任教授)が2月22日15時13分に聖マリアンナ病院にて膵臓がんで永眠されました。ご本人のご遺志で、葬儀などは行われず、28日に荼毘に付されるとのことです。
以下は毎日新聞の訃報記事です。
https://mainichi.jp/articles/20190223/k00/00m/040/181000c
2月15日に体調が急変されて緊急入院される直前まで、『「平和表象」としての鳩と折鶴』への執筆にも意欲的で、新たな資料も集められ構想を膨らませておられました。また、12日には毎日新聞のインタビューに応じ(『毎日新聞』夕刊2月17日付)、18日にはNHK大阪の「国防婦人会」に関するインタビューにも応じようとされていました。また、辺野古への土砂流入開始のニュースには、「胸が潰れそう...」と、息を詰めて見つめられ、日本の現状に危機感を募らせておられました。
これまで私たちは加納さんのお仕事から多くのことを学んできましたが、病を公表されてから、この間、ギリギリ最期まで、社会に向けたメッセージを発信され、後を歩むわたしたちに身をもって「生き方・死との向き合い方」を示してくださっているように思います。
以下は最後のお姿を報じた毎日新聞2月19日の記事です。
https://mainichi.jp/articles/20190219/dde/012/040/006000c?inb=ys&fbclid=IwAR19vIsvDGeRbHC0aS9vX4QFqrHBTDGx-vDiSHKWTcmZXgiud8jZ6n17fQY
加納さんは、「銃後史」の創始者のおひとり。加害と被害の重層性に着目して女性の戦争責任を問い、現実を多元的・複眼的に見ることの大切さを教えてくださいました。
WANの会員でミニコミ図書館の智恵袋、ミニコミ図書館に地方女性史関連ミニコミの収蔵が可能になったのは、ひとえに加納さんのおかげです。
https://wan.or.jp/dwan
昨年11月17日には、遺著となった『「銃後史」をあるく』(インパクト出版会、2018年)の出版記念会を親しい友人たちのあいだで開催。めったに見ない和服姿でご登場くださり、書き下ろしを予定しておられた著書、『「平和表象」としての鳩と折鶴』の内容について、パワーポイントを使いながら、力のこもった講演をしてくださいました。「平和表象」に「」がついているように、「鳩」も「折鶴」も文脈次第で誤用、流用されるアンビヴァレントなシンボルであることを論じた、加納さんらしい講演でした。次作が日の目を見なかったのは残念でなりません。
心から哀悼の意を表したいと思います。
(文責 上野千鶴子・平井和子)


パワポを用いて講演する加納さん

ご挨拶する和服姿の加納さん

花束贈呈の後、上野と
みなさまに追悼の気持ちを表したいご意向がございましたら、追って掲載していきます。投稿のお問いあわせは以下へ。
info@wan.or.jp
一橋大学の先端研究『ジェンダー研究を継承する』プロジェクトの特設アーカイブサイトから、パイオニアのお一人として生き生きとした加納さんの語りの動画がご覧いただけます。
http://gender.soc.hit-u.ac.jp/sentanken14/
WANサイトに掲載の関連記事は以下のとおりです。
<動画>
シビル市民講座 加納実紀代さんと読む『戦争は女の顔をしていない』
https://wan.or.jp/article/show/7657
https://wan.or.jp/article/show/7666
https://wan.or.jp/article/show/7682
ブックトークこうして戦争は始まる―孫世代が出会う銃後の女たち
https://wan.or.jp/article/show/7574
和光大学ジェンダーフォーラム公開ブックトーク「高群逸枝と母性主義」
https://wan.or.jp/article/show/6959
第12回全国女性史研究交流のつどいin岩手 基調講演「戦後70年:平和の礎としての女性史を」
https://wan.or.jp/article/show/6493
第34回山川菊栄賞贈呈式
https://wan.or.jp/article/show/4157
加納実紀代 脱原発の論理-放射能障害を越えて
https://wan.or.jp/article/show/4153
ブックトーク映像館★新編日本のフェミニズム第10巻『女性史・ジェンダー史』
https://wan.or.jp/article/show/4945
<記事>
孫世代がひらくリブの新次元――柳原恵著『〈化外〉のフェミニズム 岩手・麗ら舎読書会の〈おなご〉たち』 評者:加納実紀代
https://wan.or.jp/article/show/7927
銃後の女たちーー戦争のリアル孫世代に 加納実紀代
https://wan.or.jp/article/show/7658
女たちの現在と「銃後の女」ーー手作業の史料集め、手づくりの機関誌
https://wan.or.jp/article/show/1512
『ヒロシマとフクシマのあいだ——ジェンダーの視点から』 加納実紀代
https://wan.or.jp/article/show/1245
[WAN的脱原発](16)ヒロシマとフクシマのあいだ⑤ 加納実紀代
https://wan.or.jp/article/show/3338
WAN的脱原発](15)ヒロシマとフクシマのあいだ④ 加納実紀代
https://wan.or.jp/article/show/3337
[WAN的脱原発](14)ヒロシマとフクシマのあいだ③ 加納実紀代
https://wan.or.jp/article/show/3333
[WAN的脱原発](13)ヒロシマとフクシマのあいだ② 加納実紀代
https://wan.or.jp/article/show/3330
[WAN的脱原発](12)ヒロシマとフクシマのあいだ① 加納実紀代
https://wan.or.jp/article/show/3328
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