シネマラウンジ

映画と女性と社会をつなぎます。フェミニズム、ジェンダーを視野に入れつつ、映画をとおして世界の女性の多様な生の現実にふれ、ともに語りあえるような交流の場をめざしています。新作映画評、エッセイ、対談・座談会、女性監督の言葉など、映画とさまざまに関わる女性たちの〈声〉をお届けします。

映画を語る

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『娘は戦場で生まれた』 命への、普遍的な祈り  中村奈津子

2020.02.28 Fri

2010年にチュニジアで起こり、アラブ諸国に広がった「アラブの春」と呼ばれる民主化運動。その動きがきっかけとなり、2011年にはシリアでも、アサド大統領による長年の軍事独裁政権から脱し、平和的な方法で自国の民主化をはかろうとする運動が始まった。声を上げた市民に対し、アサド政権は暴力による制圧をはかり、市民の中から、自分たちの命と権利を自力

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ / 映画を語る

『ソン・ランの響き』 愛としか呼べない音色  中村奈津子

2020.02.21 Fri

1980年代のベトナム・サイゴン(現・ホーチミン市)。身寄りのいないユン(リエン・ビン・ファット)は、高利貸しを営むズーのもとで借金の取り立てを生業としている。口数が少なく、返済が遅れた客には顔色ひとつ変えずに暴力をふるう彼は、周囲からも恐れられる存在だった。 ある日、ユンはベトナム南部の伝統歌舞劇<カイルオン>の舞台小屋へ借金の取り立

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ / 映画を語る

『ブレッドウィナー』 「生きのびる」ための物語  中村奈津子

2020.01.31 Fri

2001年に起きた、アメリカ同時多発テロ事件後のアフガニスタン・カブール。厳しい戒律を定めるタリバン政権のもと、人々は、およそあらゆる自由を禁止されていた。小さなアパートのひと部屋で、戦争で片足を失った元教師の父と作家の母、姉と小さな弟と5人で暮らす11歳のパヴァーナは、父につれられ、露店の手伝いをしていた。歴史の教員だった父は、仕事の合

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ

『さよならテレビ』  「さよなら」は再出発になるか  中村奈津子

2020.01.18 Sat

東海テレビ放送(愛知・岐阜・三重を放送エリアとする、フジテレビ系列のテレビ局)は、ドキュメンタリー映画の制作に定評がある。2010年に「戸塚ヨットスクール」の戸塚宏校長を追った『平成ジレンマ』を劇場版として初公開して以降、「名張毒ぶどう酒事件」を取り上げた『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(2012)や『眠る村』(2018)、話題

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ

映画評 「ロニートとエスティ 彼女達の選択」 河野貴代美

2020.01.04 Sat

主人公の一人、ロニートは、ロンドンの超正統派ユダヤ教コミュニティにおける、指導者(ラビ)の一人娘として生まれるが、古い頑なな信仰を捨て、ニューヨークに移住し、写真家として自立している。もう一人の主人公、エスティは、地域に残り、3人が仲良しであった、その一人ドヴィットと結婚して、信仰を守ろうとしている。エスティは、ドヴィットを尊敬し、彼はロ

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ

「私のちいさなお葬式」 「終わる」ことと向き合う  中村奈津子

2019.12.27 Fri

ロシアの田舎の村で、一人つつましく年金暮らしをしている73歳のエレーナ(マリーナ・ネヨーロワ)は、あるとき病院で、突然の余命宣告を受けてしまう。彼女のカルテを見た医師から、いつ心臓が止まってもおかしくない状態だ、と告げられたのだ。 彼女の夫はすでに他界し、ひとり息子のオレク(エヴゲーニー・ミローノフ)は街へ仕事に出たまま、忙しいからと5

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