シネマラウンジ

映画と女性と社会をつなぎます。フェミニズム、ジェンダーを視野に入れつつ、映画をとおして世界の女性の多様な生の現実にふれ、ともに語りあえるような交流の場をめざしています。新作映画評、エッセイ、対談・座談会、女性監督の言葉など、映画とさまざまに関わる女性たちの〈声〉をお届けします。

映画を語る

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『在りし日の歌』 時代の波に翻弄された人びと  中村奈津子

2020.04.11 Sat

1986年の中国。北方内陸部の工業都市にある国有企業で働くリウ・ヤオジュン(ワン・ジンチュン)とワン・リーユン(ヨン・メイ)は、一人息子のシンと3人で宿舎に暮らしていた。ふたりの同僚で、同じ宿舎に暮らすシェン・インミン(シュー・チョン)とリー・ハイイエン(アイ・リーヤー)の夫婦にも、偶然、シンと同じ日に生まれた息子ハオがいた。二組の親たち

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ / 映画を語る

『プリズン・サークル』 社会に「回復」の輪を広げる  中村奈津子

2020.04.02 Thu

坂上香監督の3作目となるドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』は、初めて日本の刑務所にカメラを持ち込み、そこで行われている「TC」と呼ばれる服役者の更生プログラムと、プログラムの受講生たちを丁寧に取材し作られた作品だ。刑務所の扉は予想をはるかに超えて固く、なんと取材許可がおりるまでに6年、撮影に2年を費やしたという。坂上監督の信念や情

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ

『娘は戦場で生まれた』 命への、普遍的な祈り  中村奈津子

2020.02.28 Fri

2010年にチュニジアで起こり、アラブ諸国に広がった「アラブの春」と呼ばれる民主化運動。その動きがきっかけとなり、2011年にはシリアでも、アサド大統領による長年の軍事独裁政権から脱し、平和的な方法で自国の民主化をはかろうとする運動が始まった。声を上げた市民に対し、アサド政権は暴力による制圧をはかり、市民の中から、自分たちの命と権利を自力

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ / 映画を語る

『ソン・ランの響き』 愛としか呼べない音色  中村奈津子

2020.02.21 Fri

1980年代のベトナム・サイゴン(現・ホーチミン市)。身寄りのいないユン(リエン・ビン・ファット)は、高利貸しを営むズーのもとで借金の取り立てを生業としている。口数が少なく、返済が遅れた客には顔色ひとつ変えずに暴力をふるう彼は、周囲からも恐れられる存在だった。 ある日、ユンはベトナム南部の伝統歌舞劇<カイルオン>の舞台小屋へ借金の取り立

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ / 映画を語る

『ブレッドウィナー』 「生きのびる」ための物語  中村奈津子

2020.01.31 Fri

2001年に起きた、アメリカ同時多発テロ事件後のアフガニスタン・カブール。厳しい戒律を定めるタリバン政権のもと、人々は、およそあらゆる自由を禁止されていた。小さなアパートのひと部屋で、戦争で片足を失った元教師の父と作家の母、姉と小さな弟と5人で暮らす11歳のパヴァーナは、父につれられ、露店の手伝いをしていた。歴史の教員だった父は、仕事の合

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ