誕生月の10月を過ぎ、私もついに40歳という年齢を迎えてしまった。

『もっと子育てのサポートが充実している社会になるのだったらもう1子産みたい。』

そんなただの主婦の願いはついぞ叶わず、ネウボラの施策も北海道では未だ機能せず、無念の節目となった40歳である。

私たちは団塊ジュニアより下である就職氷河期世代である。

人口統計的には私たちの出産可能年齢のうちに人口増に転じることでまだ一縷の望みがあったのだろうが、5年私の人生の全てをかけた活動も実を結ばずして、残念ながら成せなかったことを悔いても仕方がない、結果としてただただ受け止めるだけである。

これからいよいよ、来るべく人口減少の大きな下り坂をいよいよ目の当たりにしていく40代なのだろうと世の中を思って眺めている。

自分自身、またその同じ世代の子育てをなんとかしたいとの思いから160°も転換した私の人生。
残念ながら、私たち世代への恩恵は受けられないままであったが、今後はこれから子育てしていく世代を導き、舵切っていくべき壮年期と呼ばれる年齢にすっかり差し掛かってしまったのである。

≪なんで?わかってたのに何十年も何にもしてくれなかったの?≫

ネウボラという社会活動への入り口、きっかけは35歳からだった。

社会活動への入り口は『もう1子産みたい。』という、「自分ごと」であったのだと、今振り返り思う。
「自分ごと」について考えるほどに、社会全体の困りごとであるという認識を深め、『ネウボラ』という地域共生をテーマとしたフレームで社会をとらえたとき、すべての様々な困難や課題についても当てはまるものなのだと気づきを増していった。

「自分ごと」について、そういう視点で考えはじめた時から、それはいつしか、すべての社会福祉のあらゆる事象が・社会課題が、「他人ごと」から「自分ごと」に変化を遂げたのであった。

ところで、私自身の感覚としては、26歳で出産してから活動を始めるまでの一切の時が止まっているようだった。

出産後の私は自分本来ではなく、まったく別の人間だった。
母と妻は完全に仮面であって、演じきった10年の私自身としての時は止まっていたという認識で生きている。

母とは、妻とは、本来の自分を捨ててまでも貫くべきものなのであろうか。

『女』と『男』についての認識が日本では旧来のまま、ジェンダー平等という視点が混乱しているのが今の時代なのだと思う。

≪女と男についての意識・男も女も混乱期≫

フィンランドのネウボラという子育て支援の仕組みの素晴らしいところは、男女共同参画の指導という点も挙げられる。
産前産後の母子のケアにとどまらない、父母となるためのトレーニングも担っているというところである。
子育ての福祉に男性の育児参加というリソースを強力に利用するためのアプローチをネウボラが担っているのだ。

男性の育休・育児のための休暇や育児参加によって、ケア労働という福祉を担うこととし、子育てにおける家事支援、産後うつ、子育ての孤立、などといった予防的支援を行っているということなのである。

それに、母子の妊婦検診に父親がつきそうことが当然の権利となっている。
父親がネウボラにいくのに、会社で当たり前のように休暇が取れるのである。

それと比べると、パパ育休へのハラスメントや、子育てで男性が休みを取ろうかという時の勤務先の冷やかさといったら子育てを歓迎するムードでは決してない。

それは女性であっても同じで、『子育てで休む』=『欠勤遅刻は悪』となる認識が強すぎるのではないだろうか。

札幌市でも、「社会全体で子育て」というキャッチフレーズが昨今流行っていたが、言葉の響きの良さだけで実体的なところは空洞化しているといっても過言ではない。

男性の育児参加というケア労働力を利用して子育てにおける予防的支援を行うためには、社会全体で子育てを応援する機運としての、企業も巻き込むワークライフバランス拡充という施策がどうしても必要なのである。

そのためには、女性側も男性の家事参加に柔軟である必要がある。

これまで、家事・育児は女性の聖域と言われ、それを担う事に自己肯定感を強めてきた昭和の専業主婦という役割の長い歴史がある。
この専業主婦という文化は実は、日本においてはこの行動経済成長の時期に発生したきわめて珍しい文化であるそうだ。
この女性像を、祖母や母、その他の女性たちや、メディアによる映像・マンガなど文化的なものからもすっかり刷り込まれてしまっている感覚なのであろうと思う。

女性のプライドは本当に必要なものだろうか。
家事・育児を自分だけの聖域にしないということも女性側の気持ちにも必要なのではないだろうか。

このように、40歳となり、出産妊娠を遠いものとして眺めるようになった。
いよいよ妊娠期からの切れ目ない支援の活動は当事者から支援者側へとシフトしたのだと感じる。

小学生・中学生母という目線に立ち、かつ、妊娠出産からはじまる子育て家族への支援者として益々この40代というステージを楽しんでいきたいと思う。

全ての子育て家族が、望むような妊娠出産子育てのライフステージを思い描いた通り実現できるために。

~人生が160°変わった!主婦の社会活動という選択~
#1【ただの主婦】
#2【ネウボラ】
#3【WANとの出会い①】
#4【WANとの出会い②】
#5【シグナル①北大と私】
#6【シグナル②明るいニュース】
#7【孤立母子①】
#8【#MeTooとネウボラ①】
#9【ネウボラ活動と私①】
#10【ネウボラ活動と私②】
#11【ネウボラ活動と私③】
#12【夫の家庭活躍】
#13【3つの満月と藻岩山】
#14【北海道の統一地方選挙2019】
#15【北海道の統一地方選挙2019続】
#16【若者が選挙に関心ない3つの理由】
#17【パパ育休なにそれおいしいの】
#18【子どもの貧困原因は親の低賃金】
#19【札幌市2歳児虐待死事件とネウボラ】
#20【経営者という途(みち)】
#21【ブロックチェーンのなぜ】

NPO北海道ネウボラ代表 五嶋絵里奈(ごしまえりな)

2019年9月26日 ラジオ出演!
音源はこちらから⇒https://ameblo.jp/neuvola-sapporo/entry-12531275166.html